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: 状態フィードバックによる極配置問題 : sysconh16 : 線形システムに対するリアプノフの安定定理

安定性と可観測性

前節の定理5.6では$Q$を正定ととったが,可観測性に関連するある条件を満たせば $Q$は準正定であってもよいことが知られている.本節ではこれについて説明する.

 

定理5.7 $(A,C)$を可観測対とする.このとき$A$が漸近安定行列(すなわち $\dot{x}=Ax$が漸近安定)であるための必要十分条件は

\begin{displaymath}
A^TP + PA = -C^TC
\end{displaymath} (19.1)

の解$P$が正定となることである.

 

証明 十分性を示す.リアプノフ関数の候補として$V(x)=x^TPx$ととる.明らかに$V$は正定であり,

\begin{displaymath}
\dot{V}(x) = \dot{x}^TPx + x^TP\dot{x} = x^T(A^TP + PA)x = -x^TC^TCx
\end{displaymath}

より $\dot{V}(x) \leq 0$であるから$V(x)$はリアプノフ関数である.この$V(x)$が定理5.5の条件2'.を満たすこと,すなわち任意の$x(0) \neq 0$に対するシステム(17.1)の解$x(t)$$t \geq 0$において恒等的には $\dot{V}(x(t))=0$とはならないことを示す.

背理法により証明するため任意の初期値$x(0) \neq 0$に対する$\dot{x}=Ax$の解$x(t)$が恒等的に $\dot{V}(x(t))=-x^TC^TCx = 0$を満たすものとする.すると

\begin{displaymath}
Cx(t) = Ce^{At}x(0) = 0
\end{displaymath}

が得られ,これを$t$に関して$i$回微分すると

\begin{displaymath}
CA^ie^{At}x(0) = 0, \quad i=1,2,\ldots,n-1
\end{displaymath}

となり,これらをまとめると
\begin{displaymath}
\left[ \begin{array}{c}
C  CA  \vdots  CA^{n-1} \end{array}\right] e^{At}x(0) = 0
\end{displaymath} (19.2)

となる.ところが$(A,C)$は可観測対であり,$e^{At}$は正則行列であるので

\begin{displaymath}
{\rm rank}\left[ \begin{array}{c}C  CA  \vdots  CA^{n-1}\end{array}\right]
e^{At} = n
\end{displaymath}

である.これと(19.2)式より明らかに$x(0)=0$でなければならず,矛盾する. したがって $\dot{V}(x(t)) \neq 0$となり,原点は漸近安定である.

 

必要性については省略する(各自で確認).



endo 平成16年6月30日