ニューロンの動作は、ニューロコンピューティングの立場からすれば、多入力- 出力の非線形素子といえるが、 実際には精緻な分子機構に基づく複雑な高機能素子であり、たいへん豊富なダイナミクスを有する。 しかし、ニューロンの持つ機能をすべて忠実にモデル化しては、そのダイナミクスが複雑になり、かえって重要な原理を見落としかねない。 ニューロンの持つ機能のうち、必要なものを見極めてモデル化することで、脳における情報処理の重要な原理の見通しがよくなる[4]。
ニューロンのモデルとして重要なものに、マッカロとピッツのモデルがある。 マッカロとピッツが提案したものを図 2.2に示す。
この図の は対象となるニューロンの 番目の入力であり、0 か のパルス入力である。 は結合荷重と呼ばれており、シナプス結合の強さを表す。 はニューロンに対する閾値であり、ニューロンはこれを越えると興奮する。 は出力である。このニューロンモデルについて以下の式を導く事ができる。
式(2.1)で、 は膜電位、又は内部ポテンシャルと呼び、 番目の入力が来ると(すなわち )ニューロンの膜電位が 高くなることを示している。 ここで ならば興奮性シナプス、 ならば抑制性シナプスを表している。 であれば結合していないという事である。 はしきい値を表し、各入力にシナプスの重みを掛けた荷重和 がしきい値を越えた時、ニューロンは興奮する。このモデルでは入力と出力は0と1の離散的な値である。式(2.2)は出力関数で以下のように与えられている。
この関数は階段関数であり図 2.3となる。