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第6章 結論

本研究では、カオスニューラルネットの学習、想起について調べた。 学習の際に、覚えさせるパターンにノイズがのっていても カオスニューラルネットワークは時間的な総和をとるために、 学習は成功する。 それはわかっているが、そのときに 学習の効率を変える tex2html_wrap_inline1002 を変化させ、それにより どの程度学習成功数は変化するかについて研究を行なった。

学習させるためのパターンにノイズをのせると、 その数が増えるにつれて 当然のことだが学習成功数は減っていく。 ノイズが10個であれば、 tex2html_wrap_inline1156 が間違った信号であるので ほとんど想起できていないのは当然である。

tex2html_wrap_inline1002 を変えることによる学習成功数の変化は、 これまでの本研究室の研究では tex2html_wrap_inline1002 の値が2.0付近のときに 学習成功数が一番多いという結果が出ていたが、ノイズが10個入っていると 1.5付近の値で一番良い結果が得られた。 tex2html_wrap_inline1002 が0であれば、学習成功数は全ての場合で0個になっている。 これは、不応性がない場合には結合荷重を少し変化させただけで 学習するための条件式がなりたたなくなり、簡単な学習をしただけで 終ってしまうことになるので当然の結果といえる。 以上の結果より、不応性の項を考慮に入れることの有効性が 実証されたといえる。

これまでは学習回数を50回でおこなってきたが、 100回に増やすことによる学習成功数の変化を調べた。 ここでは、ノイズが0個であれば学習回数を増やせば 学習成功数は増えている。 しかし、ノイズの数が10個であるとき、学習回数を100回に 増やした時に学習成功数が減ると言う結果がでた。 これは大変興味深い結果である。 これには学習の強さが関係していると考えられ、 学習回数を増やすことで、ノイズが入っている間違ったパターンを 強く覚えてしまい、想起して欲しいパターンを連想しにくく なったと考えられる。

これまでの実験ではそれぞれのパターンの学習終了後に 内部状態をリセットしなかったが、 本研究室のこれまでの研究で、リセットをした場合に 学習の効率があがることが示されている。 そのため、ノイズの数が0, 5, 10個の場合について リセット有り、無しについて実験を行なった。 この実験結果から、 ノイズが0個であればリセット有りの方が学習成功数は多い、 しかしノイズが10個の場合、リセット無しの方が 学習成功数が多い、という結果が出た。 ノイズの数が0個と10個で、リセットをすることによる 学習成功数の受ける影響が違うのである。 これは非常に興味深い結果である。 これにより、ノイズが0個であれば前の状態に影響されない方が良いが、 ノイズが10個であれば前の状態に影響された方が良いことがわかった。 ノイズののった間違ったパターンを学習する際には、 時間的な総和をとり学習をすることによる影響が大きいため このような結果がでたと考えられる。

これまで、学習が成功した時だけに注目してきたが、 学習が成功しなかったときというのはどうなっているのだろうか。 そう考えて調べてみると、面白いことがわかった。 元のパターンに似ているパターンを出力することもあれば、 全然似ていないパターンを出力することもあるし、 他のパターンに似た出力をすることもある。 他のパターンに似た出力では、Zに良く似た出力が多いことに気づいた。 これは最後に学習を行なったのがZであることが 大きく関係していると思われる。 終盤に学習したW, X, Yの学習も成功していることからこの考えは 正しいといえるだろう。 しかし、完全に実証するためには これ以外の要素として、パターンの学習のしやすさも考慮しなければ ならないだろう。 これについては本研究では検証をおこなっていないため、 これからの研究に期待したいと思う。 以上のことより、うまく学習を行なうためにはどうすればよいかわかった。 まず、パターンそれぞれを似ていない、区別しやすい形状のものにすること、 それと覚えにくいと思われる形のものを学習の最後の方にもってくることである。

ノイズが10個で学習回数を100回にした時、予想に反して学習成功数が減ったり、 ノイズが0個でリセット有りの時、学習成功数が増えたのに、 ノイズが10個のときにはリセット有りで学習成功数が減ったりと、 ノイズの影響の大きさをとても感じる結果となった。 実際に実用しようとしたときに、ノイズというのは無視できないので、 これらの問題をいかにクリアするかがとても大きな課題になってくると思われる。 また、 tex2html_wrap_inline1002 という、不応性の項の係数の大きさが 学習成功数に与える影響の大きさがよくわかった、 それにともない、不応性という考え方を追加したことによる 有効性を改めて実証する結果となった。

謝辞

本研究を進めるに当たり、一年間を通して多大な御指導を賜わりました 出口 利憲先生に深く感謝すると共に、 多くの助言をいただいた同研究室の専攻科生の高木 潤氏、岩佐 要氏、 そして、同研究室で共に学んだ岩田 和久氏、森 裕紀氏に 厚く御礼を申し上げます。



Deguchi Toshinori
Wed May 15 13:12:15 JST 2002