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第1章 序論

ニューラルネットワークは人間の脳を手本とした 情報処理システムの一種で、ニューラルネットを用いた ニューロンコンピュータは人間らしさを持ったコンピュータとして 関心が深まっている。 人間の脳は約140億個のニューロンと呼ばれる神経細胞が高度な並列分散処理を 行なっていると考えられており、ニューラルネットワークは神経細胞に変わって、 人工的なニューロンモデルによって、 人間の脳の動作を再現しようとしているものである。

ニューラルネットワークは学習機能を持っており、 外部の環境によって自己組織化を行なう能力を持っている。 1943年にHebbは、ニューロンの情報入力部である シナプス結合の結合強度がニューロンの興奮によって強められることを提案し、 ニューラルネットワークの学習はこのシナプス結合の強弱によって 担われるという説を唱えた。 現在ではこの理論がニューラルネットの学習における基本則とされる。

一方、物理学の分野では、1970年代の後半から1980年代にはカオスと呼ばれる 決定論的非周期振動に関する研究が盛んになっていた。生体ニューロンに関しては 不規則なカオス応答が発見され、神経系の機能とカオスの関連性が 議論されるようになった。Freemanらはウサギ嗅球の脳波とそのモデルの におい刺激に関する応答を調べた。彼らはカオスを記憶探索するためのもの だけではなく、未知のパターンを識別し、学習するためにも使われていると 考えている。 このようなことから、カオス現象を持つニューラルネットが研究され、 現在に至る。

本研究ではカオスニューラルネットの学習方法として逐次学習法を用いた。 逐次学習法とは、本研究室で提案した学習法であり、 Hebbの学習則を応用したものである。 逐次学習法では、二つのニューロンが供に興奮している 状態の時はシナプス結合を強くするという学習則を応用した学習法で、お互いの ニューロンの出力が同じ時にはシナプス結合を強くして、違う状態の時には シナプス結合を弱くするという動作をする。つまり、個々のニューロンが 自分自身の内部状態により結合荷重を変化させるか否かの判断を行ない、 追加学習する学習法である。 逐次学習法では、カオスニューロンの内部状態を示す外部入力項、相互結合項、 不応性項からある条件が満たされた時に学習を行なう。 その条件を単純に述べると、相互結合の項と外部入力の項の符合が異なった時に 追加学習をする。 逆にいえば二つの項が同符合になるまで追加学習することになる。

今回この学習法で学習パラメータとなる結合荷重の変化量について研究を行なった。 本研究の目的は、この結合荷重の変化量を変化させると、 学習にどのような影響を及ぼすかを調べることである。 本研究室では以前よりこの結合荷重の変化量 tex2html_wrap_inline1112 = 0.05 で行なっている。 今回使用したパターンは、アルファベットの大文字でA tex2html_wrap_inline1126 Zまでの26個を用いた。 この入力は7 tex2html_wrap_inline1128 7の49マスを白と黒で構成したものである。 この白と黒配列に特徴があり、 学習しやすいパターンと学習しにくいパターンがある。

このパターンを用いて、結合荷重の変化量の変化にともない 学習にどのような変化があるかを実験し、また本研究室で使用していた tex2html_wrap_inline1112 = 0.05の値が適した値なのか検討する。



Deguchi Toshinori
Wed May 15 13:53:18 JST 2002