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第1章 序論

有史以来、人類は知性の源は何かという問いを続けてきたが、 現在では脳がその答として常識となっている。 では、数々の発明をしてきた人類にとって 脳もまたその対象となっても不思議ではないが、 そもそも脳を作ることは可能であろうか。

人類のつくり出した、脳類似の発明品として コンピュータがある。 コンピュータが初期の頃は、 人工頭脳(Artificial Brain)と 呼ばれていたことからも 人々がコンピュータに脳の幻影を 見ていたことは確かだろう。 その後、ノイマンやチューリングらにより 示されたアルゴリズム原理に基づく プログラム内蔵型の直列逐次情報処理方式の シナリオにしたがって、脳研究とは無関係に 進展し、半導体技術の発展に伴って 爆発的にその実用性を増していったのは 周知の通りである。 また、このようなコンピュータ技術の進歩を背景に、 認知科学ともタイアップして、 脳の情報処理メカニズムと全く異なる形で、 ``人工知能''(AI:Artificial Inteligence) が実現され大きな市場となった。

しかし、このようなノイマン型 直列情報処理コンピュータの 急激な発展に伴って、 その問題点も顕在化する。 すなわち、コンピュータの 能力が中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)を 用いた逐次処理速度で制限される ノイマンのボトルネックおよび、 コンピュータの複雑化や社会への急激な普及に ソフトウェアの開発が追い付けない ソフトウェア危機の問題である。 また、直列情報処理が パターン認識や知識情報処理などに、 本質的に適さないのではないか という疑問も指摘された。

このような状況の中で、 新たに異なる発想ので、 並列型情報処理コンピュータを 作ろうとする動きが、 それまでの脳研究とあいまって 活発になる。 これが、ニューラルネットワークである。[###1#]

ニューラルネットワークとは、 人間(動物)の神経細胞を模した人工のニューロンを適当に接続し、 入力を出力に写像する情報処理系のことである。 ニューラルネットワークは、 高速のパターン認識や不完全なデータに基づく知識処理、 適応学習能力などの面で優れており、 近年には各種認識問題や機械制御などへの応用がなされている。

ここでは、いくつかの構成のニューラルネットワークに 独自に作成したゲームのプレーヤーを操作させ、 それぞれの構成の有効性について考察する。 入力する内容や中間層の数の異なるニューラルネットワークに それぞれバックプロパケーションを用いて 教師あり学習を行なう。 ただし、教師信号は理想的な値をあらかじめ用意しておく。



Deguchi Toshinori
Wed May 15 11:03:10 JST 2002