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第6章 結言

本研究ではニューラルネットワークにより操作されたプレーヤーを ゲームの中で動作させたが、ニューラルネットワークの構成によって 動作の特性が大きく違ってくることがわかった。 つまり、構成1のように人為的に適当な前処理をし、 「この素子は例外処理用」「この素子とこの素子の入力は加算し出力」など 各素子への入力に対する出力の対応がはっきりしているものや、 構成2のように各素子への2値の入力と各出力が対応しているものなどは、 バックプロパゲーションによる学習は簡単に行なえたが、 構成3のように連続値とそれによる判断の伴うものは、 学習がほとんど出来なかった。

構成2では、どちらのターゲットを追うのかという判断と 追うターゲットの位置の方向への角度を同じニューラルネットワークで 出力しなければならなかったため、ゲームを遂行するだけの精度はあったが、 教師信号に対する誤差は他の出力よりも大きかった。 このことは、ニューラルネットワークの可能性と限界を示すもので、 複数の要素を総合的に判断させようとすると人間と同じく 高い精度を保つことが難しくなるということを示唆している。 しかし、構成2の結果からは中間層を増やした方が複雑な回転角度の 処理がより正確になったという結果もあり、 もっと多くの素子数にすることで、 より複雑、より柔軟な処理が可能になるかもしれない。

また、構成2では2つのターゲットを 入力した場合の学習しかしていないので、 ターゲットが3つ以上視野の中にある時は、 学習回数が少ないとあらぬ動作をしていたものが、 学習回数を重ねるにしたがって ゲームの遂行に支障のない出力に収まっていった。 もちろんこれは、期待していた一番近いターゲットの方向を向くための 出力にちょうどなったわけではないものの、 これまでの学習から未知の入力に対しての 出力を類推したものと解釈でき、 より複雑な学習をした時も 同じような効果がある可能性があり、 このことは、ニューラルネットワークを 応用する上で重要なことだと考えられる。

この研究から、 ニューラルネットワークを都合良く動作させるには 人為的にうまく設計してやればよいという当たり前の 結論が出てしまったが、 これから処理速度の速い計算機により 単位時間当たりの学習回数が飛躍的に増えたり、 最近提案されているような ニューラルネットワークによる 強化学習などの研究[###1#]が進めば より人間に近いまた、人為的な設計の余地の少ない 情報処理機構が出来るかも知れない。

この研究をもって、ニューラルネットワークの可能性について 議論するのは早計であることは承知だが、 議論の一つの材料になればと思う。

謝辞

最後に、本研究を進めるに当たり、1年間多大な御指導を賜わりました 出口利憲先生に深く感謝すると共に、同研究室において助言をいただいた 専攻科の岩佐要氏、高木潤氏、また同研究室で共に学んだ、 石丸修一郎氏、岩田和久氏に厚くお礼申し上げます。



Deguchi Toshinori
Wed May 15 11:03:10 JST 2002