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第1章 序論

近年の科学技術の発達はめざましく、 次々に新しい技術や発想が生み出されている。 そして、それら多くの技術革新の根底は コンピュータの存在によって支えられているところが大きい。 現在世間一般におけるコンピュータとは ノイマン型コンピュータと呼ばれるもので、 あらかじめプログラミングされた処理を行なう速度は 人間とは比べものにならないほど速く、その精度も高いため、 複雑な学術計算などにその真価を発揮する。 しかし、普段人間が何気なく行なっている 「文字を読む」とか、「相手の言っていることを理解する」といった 曖昧さを含んだ情報の処理を従来のノイマン型コンピュータで実現しようとすると、 ある程度の性能は得られるものの、本質的に困難な面があると いうことがわかってきている。 そのため、人間特有の情報処理に適したシステムが模索されてきた。 本研究で扱うニューラルネットワークは人間の脳を手本とした 情報処理システムの一種で、ニューラルネットを用いた ニューロンコンピュータは人間らしさを持ったコンピュータとして 関心が高まっている。 人間の脳は約140億個のニューロンと呼ばれる神経細胞が 高度な並列分散処理を行なっていると考えられており、 ニューラルネットワークは、神経細胞に変わって人工的なニューロンモデルによって、 人間の脳の動作を再現しようとするものである[1]。

ニューラルネットワークは学習機能を持っており、 外部の環境によって自己組織化を行なう能力を持っている。 1943年にHebbは、ニューロンの情報入力部であるシナプス結合の 結合強度がニューロンの興奮によって強められる変更則を提案し、 ニューラルネットワークの学習はこのシナプス結合の強弱によって 担われているという説を唱えた。 現在ではこの理論がニューラルネットの学習における基本則とされている。

本研究室では例年、このHebbの学習則に基づいたニューラルネットの 学習についての研究を行なってきた。 しかし、昨年までの学習モデルとして用いられていた逐次学習法のモデルは Hebbの学習則に従っていない部分があり、ニューロン本来の動作として 不自然な点があった。 そこで本研究は、昨年までの逐次学習法のモデルをHebbの学習則に従った形に修正し、 その上で、昨年までのモデルと学習性能がどのような点で 異なるかを調べることを目的とする。 学習させるパターンにはアルファベットの 大文字、小文字に、さらに記号を加えた合計60種類の白黒のパターンを用意した。 今回は学習性能を比較するため、学習を終えた各ニューラルネットの 結合荷重をホップフィールドネットに与えて想起を行ない、 想起段階で学習法毎に違いが現れないようにした。 比較のため、昨年までの逐次学習法のモデルの他に、 変更点を加えたモデルを3種類用意し、学習できるパターン数、 ノイズに対する耐性等の学習性能を比較し、どの学習法が もっとも優れているかを検討する。



Deguchi Toshinori
Mon Feb 19 13:32:26 JST 2001