next up previous contents
Next: 参考文献 Up: onogi Previous: 方形波   目次

結論

本研究では、遺伝的アルゴリズムによって最適なパラメータを決め、 カオスニューラルネットによるバックプロパゲーションで時系列の予測をし、 入力する波形や、適応するパラメータによってどのような性質があるのかを調べた。

時系列の予測に用いるデータは、正弦波・方形波である。 まず正弦波のサンプリングする分割数を変えた時の学習について実験を行った。 その結果、学習に用いる波形のサンプリング数によって、学習できる場合と学習できない場合があった。 学習するデータ数が極端に少ない場合においては安定して学習することができたが、 そうでない場合についてはあまりデータ数の多さと学習の成功には関連性が見られなかった。

次に入力を方形波に変更して実験を行った。 入力に方形波をフーリエ展開し、高調波をいくつ足し合わせるかで入力波形を変更することにした。 一般的な概念では、合成する高調波の数を増やせば複雑な波形となる。 しかしながら、入力にはこれをサンプリングした点を入力していくので、 高調波の数が学習の難しさとなっているとは言えない。 この実験においてもデータ数の多さは直接的に学習に関係していないという結果が得られた。 また、入力波形の変化の仕方が急激に変わるような波形、 つまり小さな変化が続いた後に値が反転するような場合においては 学習に失敗しやすいことが分かった。 サンプリング数を奇数とするか偶数とするかで、最大値と最小値の中間となる点の数が 変わり、奇数の時が1つ、偶数の時が2つである。 中間となる値が1つだと、値の変化が急激に変わる点が必ず1つ出てくるのでそれを学習するのは難しい。 また、分割数が極端に小さい場合においては値が極端に変化したとしても、変化の仕方が急激とはならないので、 学習に成功したのである。

学習に成功したネットワークは、バックプロパゲーションを終えて、入力を与え続けても動作する。 入力として正しい信号を与え続ければ、多少の誤差はあるが、正確に次の信号を予測した。 つまり、学習に成功すれば1つ先の未来については予測ができるということである。 その予測した値を入力に戻して次の未来への予測は、できる場合とできない場合があった。 バックプロパゲーション終了時における誤差がある程度小さくないと、この予測を行うことはできないが、 この誤差の小ささと予測の成功にはあまり関連性が見られなかった。 また、予測に成功した波形は、正しい波形と比べると、値の変化が小さくなるようになっていることが分かった。 学習に成功した場合には次のような特性が見られた。 学習に用いるパラメータが同じであれば、学習する波形が違っても バックプロパゲーションによる誤差の減少の仕方が似たような特性となる。 しかし、学習した波形毎に適切なパラメータが違ってくるので、今回用いたカオスニューラルネットによるバックプロパゲーション の定数として1つに定めることはできない。

よって、異なる時系列に対してそれぞれに合った探索を行う遺伝的アルゴリズムによるパラメータの探索は有効であったと考えられる。

今後の課題としては以下の2点が挙げられる。 時系列の予測として、ある程度誤差があっても予測に成功する時とそうでない時があり、 この予測できるための条件について調べる必要がある。 また、今回実験を行った時系列に対してすべてを学習することはできなかったため、学習の成功率を増やすことも今後の課題である。

謝辞
最後に本研究を進めるにあたり、御多忙中にもかかわらず多大な御指導を賜わりました出口利憲先生に深く感謝するとともに、 同研究室において助言をいただいた専攻科の松野圭将氏、木村俊貴氏、 共に勉学に励んだ岡晋之介氏、林氏、福田純也氏に厚くお礼を申し上げます。



Deguchi Lab. 2010年3月5日