next up previous contents
Next: 第2章 神経回路網研究 Up: 無題 Previous: 目次

第1章 序論

近年、神経回路網(ニューラルネットワーク)の研究が盛んとなり、毎年多くの国際会議が開かれている。その理由として、ひとつには、神経回路網が新しい情報処理技術とみなされていて、現在のノイマン型のコンピュータの原理と異なる新しいコンピュータ誕生への期待がある。あるいは、神経回路網と現在のコンピュータとの結合により、現在のコンピュータが苦手とするような仕事をうまく処理するような新たな情報処理の形態をつくり出すという願いがある。

人間の脳は``あいまいさ''を持った情報を巧みに処理(並列情報処理)することができる。コンピュータの性能を、この人間のような高度なものにするために、神経回路網に求められる機能の一例として、入力に対して前もって記憶していたパターンを連想するという連想記憶が挙げられる。現在までの研究により、入力パターンにノイズが入ってしまった場合や、入力パターンが記憶しているパターンと違う場合に、出力を自分自身の入力にフィードバックする回想モデルを用いれば、想起能力が高くなるということが分かっている。

3年前、本研究室の研究生であった館智司氏は、入力の前後が関係する時系列の処理について、記憶層のかわりにランダム層を設けるモデルを作成し、記憶するパターンとランダム層が記憶したパターンを対応させた場合の想起能力について研究を行なった[1]。さらに一昨年、鈴木真矢氏は、学習パターンの周期を更に大きくした場合の想起能力について検討した[2]。その結果、ランダム層モデルでは、再発部分系列の長さに関わらず二層のままで良く、学習されるパターンのサイクルが大きくなった場合、このモデルのような相互相関学習では、サイクル内に他のサイクルと同じパターンがない場合が想起能力が最も高くなることが分かった。

本論文では、ランダムパターンと文字パターンの想起能力の比較および、学習パターンが増えたときの想起能力の測定を行ない、ランダム層モデルによる時系列処理の可能性について検討する。



Deguchi Toshinori
1998年04月01日 (水) 17時09分52秒 JST