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第1章 序論

現在、高度な情報処理を実行する装置として、コンピュータと人間の脳の二つが存在している。 しかし、両者の基本原理は根本的に異なっている。 コンピュータは与えられたプログラムに従って情報を一つずつ処理(直列情報処理)するのに対し、人間は``あいまいさ''を持った情報をとても巧みに処理(並列情報処理)することができる。 脳は学習と自己組織によって、自分の構造を豊かにする能力を持っているのである。 この人間特有の能力を、情報処理システムとしてコンピュータで実現させることが、神経回路網(ニューラルネットワーク)の目的であるといえる。

神経回路網に求められる機能はいくつもある。 一例として、入力に対して前もって記憶しているパターンを思いだす連想記憶がある。 現在までの研究により、入力パターンにノイズが加わる等により、入力パターンが記憶していたパターンと違う場合に、出力を自分自身の入力にフィードバックする回想モデルを用いれば、想起能力が高くなるということが分かっている。

昨年、本研究室の研究生であった舘智司氏は、入力の前後が関係する時系列の処理について回想モデルの応用として、記憶層の代わりにランダム層を設けるという新たなモデルを作成し、記憶するパターンとランダム層が記憶したパターンを対応させた場合の想起能力について研究を行なった [1]。 その結果、このモデルのネットワークは再発部分系列の長さに関わらず二層のままで良いことが分かった。

本論文では、舘氏が研究したモデルにおける学習パターンの周期を更に大きくした場合の想起能力について検討し、また、それらの能力を測定することによって、ランダム層モデルによる時系列処理の可能性についても追究する。



Deguchi Toshinori
1996年10月08日 (火) 12時41分40秒 JST