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2.2 神経回路網の将来

神経回路網の目標は、脳や神経系の情報処理メカニズムに学んで、その優れた機能を工学的に実現することである。 したがって、脳や神経系の持つ高度な並列分散情報処理能力と、自己組織化能力の実現が、そのポイントである。 [4]

脳は tex2html_wrap_inline1181 個のオーダーのニューロン群が tex2html_wrap_inline1183 から tex2html_wrap_inline1185 個のオーダーのシナプス結合を形成する高度並列分散情報処理系である。 また、脳は現在のコンピュータと比較して、パターン認識能力や知識情報処理能力などに優れているのみならず、真の意味でフォールトトレラントである点で際だっている。

現在のノイマン型直列処理コンピュータや人工知能と、生体の脳はその情報処理のメカニズムが基本的に異なる。 前者は、アルゴリズムに基づく直列集中情報処理原理に立脚し、応用に際しては個々にデータ、プログラムやルールを外部から与えることによって対応する。 一方、後者は密に結合したニューロン間の``協調と競合''相互作用に基づく、並列分散情報処理原理に立脚し、状況の変化には学習や自己組織化によるネットワーク構造の可塑的変化によって対応する。

したがって、脳に学ぶニューラルコンピュータにおいては、究極的には個々の応用に際して、ノイマン型コンピュータや人工知能のようにデータやアプリケーションプログラムなどを外部から詳細かつ明確に指示するものではなく、並列分散情報処理原理と自己組織化原理に基づいて、それらをニューラルコンピュータ自らが生成すべきものである。 それにより、未知のデータ、不完全なデータ、さらには互いに矛盾するようなデータをも処理することを可能にするものである。



Deguchi Toshinori
1996年10月08日 (火) 12時41分40秒 JST