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第1章 序論

近年、高度情報化社会と呼ばれる世の中でコンピュータには、 益々高度な能力が求められている。 その中で、脳の基本素子であるニューロン(神経細胞)や、 それらが結合したニューラルネットワーク(神経回路網)の構造などからヒントを得て、 人間の脳のように高度な学習能力をコンピュータで実現させようと研究が進められている。

1943年にニューラルネットワークの原理が発表されて以来、 コンピュータの自己の性能を高める能力について注目され始めた。 コンピュータの性能を、人間の脳のように高度なものとするため、 ニューラルネットワークに求められる機能が幾つもある。 一例として、入力に対して前もって記憶していたパターンを連想するという連想記憶が挙げられる。 現在までの研究により、入力パターンにノイズが加わる場合や、 入力パターンが記憶していたパターンと違う場合に、 出力を自分自身の入力にフィードバックする回想モデルを用いれば、 想起能力が高くなるということが分かっている。 また、一昨年、本研究生であった山辺英孝氏は、 入力の前後が関係する時系列の処理について、 回想モデルの応用として層を2層や3層に増加させた場合(多層モデル)の想起能力について研究をした [1]。 その結果、多層モデルで層を増加させれば想起能力が高くなるということが分かった。

本論文では、山辺英孝氏が研究したモデルとは異なった思考から、 記憶層の代わりにランダム層を設けるという新たなモデルを作成し、 記憶するパターンとランダム層が記憶したパターンを対応させた場合の想起能力について検討する。 また、それらの能力を測定することによって、 ランダム層モデルによる時系列処理の可能性についても検討する。



Deguchi Toshinori
1996年10月29日 (火) 11時21分05秒 JST