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第6章 結論

本研究では、カオスニューラルネットの学習、 またそれにともなう忘却について調べた。 学習方法として用いたのは逐次学習法で、 カオスニューラルネットに初めに覚えさせるパターン、 未知のパターンとしてアルファベットを用いた。

これまではいかに学習するかを研究されてきたことに対して、 本研究では覚えさせたパターンが、いかに忘れていくか調べた。 学習パターンに使用したパターンを、アルファベットのように、 対象となったパターンが想起する時にどの様にして崩れていくかを 人間の視覚的に分かり易いモデルを用いてその特性を調べた。

対象となったアルファベットはAからFの6パターンである。 学習パターンとしてさらにZまでを付加した。 学習パターンを個々の学習回数で学習させ、 また未知の学習させるパターン数変化させて、 セット毎に対象となるパターンを想起できるかを調べ、検討した。

学習回数の特性としては、一つに学習パターンが完全に学習を成功することで、 想起できるセット回数が多いことが分かった。

二つに、学習パターンの入力順序を変えることで、 それぞれの学習パターンの結合荷重の総変化数が 異なり、これによって対象パターンの 想起される形も変わってくることが分かった。

また学習回数が増加することで、 対象となるパターンの記憶が崩れて、 想起出来るセット回数は0になると思われていたが、 ある学習回数で再び想起するというケースが存在した。 これには複数の学習パターンらによる相互的な結合荷重の変化で、 対象となるパターンの記憶が強まった、 または干渉しあった学習パターンが弱めあったことにより、 対象パターンの影響が強く出たからだと考察できる。

特例として、アルファベットのAは特異的なパターンで、 他の対象の結果と合わせてみると、想起できるセット回数 多かった。また学習回数を増やすことで対象を正しく想起できない状態でも、 対象の全記憶を忘れたわけではないことも分かった。

しかし、対象のほとんどのパターンで、学習回数を上げることで 想起できるセット回数が減っていくことが分かった。

学習個数の特性としては、未知の学習パターンの個数を増加させることで、 想起できるセット回数は格段に減っていった。 未知の入力パターンの学習個数は3個めまでならどの対象も 一度は想起することが可能であったが、 それ以降は激しく想起できなくなっていることが分かった。 特例を除いても殆んどの場合で未知の入力パターンを学習して 想起できるセット回数には限界があることが分かった。

また、初期の学習回数が多いことで、想起できる個数やセット数が増えることが 殆んどのパターンで確認された。学習パターンの学習回数については、 より強く学習パターンを覚えさせた方が想起できることが分かった。

これらの学習により、基本的に、初めに一度だけ学習したパターンというものは、 他のパターンを繰り返し学習することにより次第にその記憶が 崩れていくことが分かった。 その中でも忘れにくいものにするためには、そのパターンが他のパターンに 類似していないこと、初期学習回数を増やすことが挙げられる。 また、未知パターンの学習で、学習回数を増やすなどして はっきりと覚えさせることで、対象パターンを含め、 学習したパターン同士が混ざらないで安定したものになり 、対象パターンが崩れにくくなることが分かった。 そして、特異な例では想起できない状態になった対象パターンでも、 その記憶は完全に忘れてしまったわけではないことが分かった。

上述の特性を活かせば、より忘れにくい学習が出来て、 その効率を挙げることが可能になる。

謝辞

最後に本研究を進めるに当たり、一年間を通して多大な御指導を賜わりました出口 利憲先生に深く感謝すると共に、同研究室において助言をいただいた専攻科の畑中 誠氏、また、同研究室において共に学んだ岩佐 要氏、長江 吉彦氏に厚く御礼を申し上げます。



Deguchi Toshinori
Mon Feb 19 18:58:08 JST 2001