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3.1 カオスについて

カオスを日本語に訳すと「混沌」や「無秩序」という意味である。 カオスは、19世紀末から研究されてきたが、一般的に 広く知られるようになったのは1970年代半ばごろからであり、 本格的に研究され始めてから、 まだ20年程度しか経っていない[5] 。

カオス現象は、 自然物、人工物を問わず非線形システムに ごくごく当たり前に生じるものである。 カオス現象の例を挙げると、炎のゆらめきや海岸に打ち寄せる波、 風によってなびく旗などがあり、日常生活の中にも 様々なカオスを観察することができる。

またカオスは生体の活動に対しても重要な役割を占めている。 例えば心臓の鼓動などがそれにあたる。 心臓の鼓動は常に一定ではなく、 強くなったり、弱くなったりしている。 刻々と変動していく予測のできない これは、自然の環境の変化に対して、 一定の鼓動であるよりも、柔軟に対応できるようになっている。 脳に関しては、ニューロン又はニューロンの集団は単一の機能を持つように 構築されるのではなくて、それらを取り巻く脳内環境や外界の状況に応じて、 複数の機能を表現できるように構築されている。 さらにそれらの活動は状態は時間的に複雑な振舞いを示し、 それらはつまりカオス的遍歴と関係している、 という津田の見解などがある[5]。

カオスの定義は様々な研究者によってなされているが、 それらを総じて要約すると、 カオスとは、

「決定論的なシステムがつくり出す非周期振動」

という現象であるといえる。 ここでいう決定論システムとは、 破ることができない不変の法則からなる系という意味であり、 非周期振動というのは、 専ら偶然に支配される確率論的な運動という意味である。 すなわちカオスは、 不変の法則に支配される系にありながら 法則性のない予測不可能な 非周期的振舞いということである[3]。



Deguchi Toshinori
Mon Feb 19 18:58:08 JST 2001