今日私たちの身の回りには生活をより便利に、楽しくしてくれる物が溢れている。 携帯電話、自動車、コンピューター、エアコンなど。しかもそのどれもが使いきれない ほどの性能、機能を持っている。とくに携帯電話はただの電話という枠を超え、 デジタルカメラ、メール端末、GPSナビゲーションなど多機能化はとどまるところを知らない。 しかし機能が増えるにつれその機能について行けなくなり、 その便利なはずの機能を使うことができない、使い切れない人が増えている。
また、よりシンプルで美しいデザインを追求することによって日常的に使う道具に イライラさせられる事も多くなってきている。例えば水道の蛇口やドアノブなどがそうである。 誰でも一度は見た事のない形で水の出し方がわからない蛇口や一見して押すのか引くのか わからないドアに出会ったことがあるはずである。
なぜ便利になったはずの製品を使うことができないのか。それは今までは高い性能、 多くの機能、美しいデザインを製品に持たせることばかりに 力が注がれてきたからにほかならない。本来道具は人に合わせて作られる物であって、 人が道具に合わせる事はない。決して高性能、多機能の製品を使いこなせない人が 悪いのではないのである。
そしてこういったデザインや機能だけを追求してしまった製品の使いにくさは ただ人をイライラさせたりするだけでなく、様々なヒューマンエラーを起こす原因にもなっている[1]。
こういった考えから現在製品の性能や機能を表すユーティリティよりも、 使いやすさ、判りやすさを表すユーザビリティという面が重視されるようになってきた。
このユーザビリティという概念が体系化されてきたのは1980年代ごろで、そのころの ユーザビリティの考えは使いにくさや分かりにくさという問題を無くすこととして位置付けらていた 。ニールセンの概念体系によるユーザビリティというのが代表的例である。しかしこの時期は いくら製品やシステムを評価する事によって問題点を見つけても 直接企業に利益をもたらすものではないとして、 消極的にしか受け取られてこなかった。
これに対して、より積極的な意味合いを持たせ、製品やシステムを有効に効率的に満足を与える ようにすることである、と考えられるように1990年代の後半からなってきた。そしてちょうどそのころ ISO13407でユーザビリティが定義されユーザビリティはさらに注目されるようになってきた。
しかし、ただ機能をわかりやすく一つ一つのボタンにわけるのが一番よいわけではなく、 また、むやみにまとめるのが良いわけではない。
そこで本研究ではこのユーザビリティという言葉をキーワードに、人が感じる使いやすさ、 自由度、理解しやすさについてどのような法則や、傾向があるのか調べる。
実験にはMACROMEDIA社製のアニメーション作成ソフトFLASHを用いる。
FLASHはもともとWeb用のアニメーションを作るためのソフトだが、ActionScriptという スクリプト言語を備えておりユーザーからの入力を受け付けるインタラクティブなソフトを 簡単に作成できる。
その特長を生かし、ユーザーがなんらかの操作を行なうFLASHコンテンツを作成し、 何人かに体験してもらいユーザビリティについてアンケートを行う。