ケルビン発電機

1. はじめに


ケルビン発電機は、1859年にイギリスのケルビンによって発明された発電機です。この発電機は、水滴を垂らすだけで発電する面白い装置です。この発電では静電誘導という現象と、蛇口から流れ出る水が途中から水滴になる現象を巧みに利用しています。展示では、ケルビン発電機で発電した電気を使ってネオン管を点灯させます。

2. 原理

 まず、静電気について説明します。物体は正と負の電気を持っています。この電気の源を電荷といいますが、普通は正の電荷と負の電荷が釣り合っていて、プラスマイナスゼロになっています。しかし摩擦などによって、物体が持つ電荷のうち正か負どちらかが多くなることがあり、この状態を帯電といいます。正の電荷が多い場合は正に帯電しているといいます。

 図1にケルビン発電機の全体図を示します。タンクに入った水は、二股に分かれて、バルブを通って水が出ます。左右の水はそれぞれコイルの中を通ってコップに落ちます。コイルとコップは金属でできており、コップAはコイルBと、コップBはコイルAと導線でつながっています。


図1 ケルビン発電機の全体図

 次に、発電の原理について説明します。図2はコイルA付近で水が落ちる様子です。コイルAは負に帯電しているとします。すると、静電誘導により負の電荷と正の電荷は引き寄せ合うので、コイルAの中を通る水は正の電荷が引き寄せられます。この状態で水が水滴になるとき正の電荷が取り込まれて、水滴は正に帯電します。この水滴はコップAに落ちますから、水滴が落ちるたびにコップAは正に帯電していきます。コップAは図3のようにコイルBにつながっていますから、コイルBも正に帯電しています。コイルBでは図2の場合とは電荷が逆になり、コイルBを通過する水滴は負に帯電します。つまり、水滴が落ちるたびにコップBは負に帯電していきます。さらに、コップBはコイルAにつながっているのでコイルAは負に帯電します。したがって、最初に述べた「コイルAは負に帯電している」はコップBの負の帯電によるものということになります。


図2 コイルを通る水滴の様子

図3 装置全体の帯電の様子


 コイルAは負に帯電としましたが、正に帯電することも考えられます。正か負どちらに帯電するかは、水滴を落とし始めるときの2つのコップのわずかな帯電の違いによって決まるようです。

 

3. 実験方法

 タンクに水を入れ、両方のバルブを開けます。このとき図2のようにコイル付近で水が水滴になるようにバルブを調整します。しばらくするとコップAとコップBがお互い逆の電荷が帯電します。ある程度帯電すると、スパークギャップで放電し火花が出ます。展示では火花が見えにくいので、ネオン管をスパークギャップに挟んでネオン管が光るようにしています。

 スパークギャップを外すと、コップの帯電がさらに進み、水滴はコップと同じ符号に帯電していますので反発しコップに落ちにくくなります。また、水滴は異符号に帯電しているコイルに引き寄せられ、コイルを中心に渦を巻いて進む様子が見られます(図4)。


図4 コイルの周りを回る水滴の様子

4. 参考になるサイト


ケルビン発電機の講義とデモンストレーションが見れます。(Youtube)
Viktor Schauberger : Lord Kelvin Water Drop Electrostatic Generator

化学の広場,物理フォーラム,サイエンスフォーラムの過去ログにケルビン発電機の原理についての議論があります。
ケルビン静電発電機について

ケルビン発電機でLEDを点灯されています。(CiNii)
脇島他:ケルビン水滴発電機の教材化,物理教育 42, p.419, 1994.