変わりゆく電気工学科(学科改組に向けて)


来場者数学内用は学内のみ、学外用は学外からのみカウントアップします。 Since Feb. 5th, 1999.


 現在、電気工学科は21世紀にむけて学科改組をめざしています。私の個人的な意見・希望(夢)をここに示します。


改組の要求理由:以下に記す。
1)電気電子・情報工学は現代の科学技術の根幹をなすものであり、21世紀の日本 を支えていくためにも、この分野の技術者を継続的に養成する必要がある。
2)本校電気工学科では、時代にあわせて随時、カリキュラム改正、授業内容の見直 し、および実験設備の更新をはかってきた。狭義の電気工学の分野だけでなく、半導 体材料などの電子工学にも範囲を広げ、さらに情報化社会を予測して、情報工学の教 官陣容を整えるなどの対応をしてきた。現在の実体は電子工学および情報工学を主体 とする広義の電気工学科ということができる。
3)本校には、昭和63年に電子制御工学科が新設された。中学生を対象とした学校説明会などで、電子制御工学科との違いに ついて説明してはいるものの、電気工学科の名称からは電気工事や電力工学など狭義 の電気工学が連想され、電気工学科は古い学科であるというような誤解を受けている 。このことは入学志願者数にも大きな影響をあたえている。
4)一方、岐阜県は産官学の共同研究を促進するためにソフトピア・ジャパンを設立 するなど、情報立県をめざしており、情報工学の技術者に対する需要が多い。情報工 学に興味を示す中学生も多い。電気工学科では情報工学を専門とする教官を複数名スタッフに加え、情 報工学の技術者を養成してきた。最近では、卒業研究のテーマとし て、情報系を選ぶ学生が多くなり、現状のスタッフだけで対応するのが困難な状況に なりつつある。
5)以上の状況をふまえ、まず、既設の「電気工学科」の名称を「電気電子・情報工 学科」に改め、中学生にわかりやすい学科名称にしたい。
 さらに、低学年においては電気電子工学系および情報工学系に関する基礎教育を行 い、高学年においては電気電子工学コースおよび情報工学コースを設置して体系的な 専門教育を行う。情報関係の教官陣容および実験設備をさらに充実させ、入学志願者 の期待および求人会社からの要望に応じることのできる技術者を養成したい。

個々の事項の説明
改組の方向性:現在の電気電子工学主体の学科に情報工学を取り入れる。
本校には情報工学科が存在しない。電気工学科はこれまで電気電子工学を主体とした教官陣容であったが、情報工学科が存在しない大学がそうであったように、電気工学科の中に情報工学を取り込み、教官陣容をととのえ、卒業生を送り出してきた。学科改組(カリキュラム改正、教官補充、設備更新)の方向としてはさらに情報通信よりをめざすのが妥当と考えている。
学科名称:電気電子・情報工学科
電気工学科の名称からは電気工事や電力工学が主体であると受け取られている。学科を改組するに当たり、名前も当然変更すべきであると考える。電子情報工学科、情報通信工学科、電気電子工学科、などいろいろな名称が考えられる。
 電気の二文字をはずすことは学科の改組ではなく電気工学科を廃止し、新学科を作ることになるので、これは適当ではない。情報工学を志向する学生の受け入れを考えれば情報の二文字をはずすことはできない。電気情報工学科の名称は明石高専や大学にも見られるが、この名称は新しい学問分野としての電気情報を連想する。学科の方向性としては電気・情報工学科が適当であると考えられるが、電気(エネルギー)と情報の組み合わせを連想し、奇異な感じを与える。
 電気電子・情報工学科は名称としては、途中で息継ぎが必要なほど長いが、最も学科の改組の内容を表している。豊田高専の電気・電子システム工学科が文部省に認められた経緯もあり、これで認められれば最適と考える。
 尚、この学科名称は名古屋大学と同じである。
学科の特徴:第四学年からのコース制
 第三学年までは電気電子・情報工学に関する基礎を学び、第四学年からコース制にする。振り分けは第三学年までの専門科目における適正(平たく言えば成績)によって進級振り分けを行い、学生に緊張感を与える。
設備:
電気工学科3階の情報通信実験室(現実はつわものどもの夢の跡)を大改装し、PCユニックスを50台導入し、情報処理センターの上位機種をそろえ、情報技術者の育成をする。
実験実習の見直し:
 現在学科内で羽渕先生を主として大幅に見直している。製図の授業も含めた抜本的な見直しであり、より実践的な技術力を身につけるための実験実習になるだろう。卒業生が「今頃になって」と怒りそう。
 もの作りは非常に重要なことであり、高専だけでなく、理工系教育一般にわたり最も重要なことの一つである。しかしながら、私が考えているのは「ものを作る技術者」ではなく「もの作りの難しさ、楽しさ、重要さを理解している技術者」である。高専は工業高校ではないと認識している。
 たとえば、機械工学科の学生が旋盤をまわしたり、ヤスリ掛けをしているのを見かけるが、それはその技術を身につけるため、あるいは技能を高めるために実習しているのではなく、将来、技能者を指導する立場になったり、あるいは設計を行ったりするときに、実際のもの作りの経験が役に立つからだと思っている。
カリキュラム:
 大学の1単位は45時間の学修を必要とする内容をもって構成されており、講義の場合、15時間は授業で、残り30時間は個人の学修で補うことになっている。演習は30時間の授業と15時間の個人の学修、実験実習は45時間の授業と定められている。
 これに対して、高専の場合30時間の授業内容に対して一律に1単位となっている。いわば大学の演習扱いと同じである。よく、大学から赴任してきた教官が同じ時間をかけているのに大学の方は2倍の単位が取れるのはおかしいではないかというような意見を言っているのを耳にするが、それは物事の本質の片側だけを見ている。もしも、その教官が大学と同じ内容を教えているとするならば、大学では個人の学修に期待して(実際はやるはずがないが)かなり講義のスピードをあげて授業を行い、高専では学生の家庭学習にはそれ程期待せず授業でしっかり教えるために2倍の時間をかけて丁寧に教えているわけであり、時間数が2倍違おうが、授業で扱う範囲はおなじ1単位である。もしも、30時間の授業を実施し、あくまで 2単位だと主張するならば、大学の2倍の授業内容になっているべきだが、それは現行の高専の単位換算では許されていない。高専の特徴は少人数教育と、丁寧な授業である。
 今、カリキュラム改正に伴い、大学単位による講義の導入が叫ばれているが、電気工学科の場合、基礎科目を重視しているので、ほとんどが現行と同じ演習扱いとし、選択科目のみを講義科目とするべきであると考えている。
跳び級:
 現在大学院などで行われつつある跳び級を導入する。どこの高専も実施を躊躇すると思われるが、高専こそ跳び級を最も導入する効果があるのではないだろうか。実際3年ぐらいの段階で卒研にはいっても充分やれる学生もいる。各学年の単位の縛りを緩くして、実験もどこかの学年で一挙に二学年分取れるようにして、電験や情報技術者や英検などの資格試験を単位として認めれば、どんどん跳び級をさせてもいいと思う。実際、情報処理も回路も電磁気も自分でがんばって勉強して試験に受かれば単位として認めればいいと思う。高専がこれから独立法人化などの動きを受けて生き残りを果たすには、起死回生の切り札になる。大学院受験資格、学位授与機構の認定などクリアすべき問題は多いが、同等以上の学力を有するものという逃げ道がどこにも用意されていると思うので、勇気をもって踏み出すことが必要であると思う。
電子回路技術:
 製図や機械工作実習と同じ見地でとらえる必要がある。実際に図面を引いたり、電子回路を直接自作する立場の職種に就くことを高専の卒業生には想定していない。しかしながら、こういった技術を身につけている、あるいは経験があるということは、電子回路技術者を指導するあるいは監督する立場になったときに非常に役に立つものである。2年から始まる電気電子・情報工学実験では、TTL論理素子、ワンチップマイコン、Z80など体系的な実験実習を行う。また、第四学年の設計実習ではこれまでの知識をフルに生かしたテーマを用意する。
跳び級(追加)
 大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」によれば、高専は大学に準じて四つの基本理念に基づいて取り組んでいくことが基本的に適当であると記載されているものの
 跳び級については大学では積極的に導入することとしているが、高専については学年制を採用していることから、大学に準じた取り扱いを行うことは不適当、と明記されてしまっている。これに関連した法案は4月27日の衆議院で可決され参議院にまわったというニュースがあり、跳び級も紹介されていたから、確定するんでしょう。高専こそ跳び級にふさわしいと思うのですが、まだまだ、教育の自由化は高専に関しては先の先のようです。
  内容:その他については、日を改めて述べる。
一部は学科で認知されているものの、基本的にはまだ稲葉個人の考えであり、学科の考えではないことを再度お断りしておく。記載内容についてご意見のある方はメールE-mail sinaba@gifu-nct.ac.jpをいただければ幸いです。
これが学校の意見であるというような誤解をする方がお見えになるといけませんので、再々度お断りしますが、くどいようですが私の個人的な夢です。

電気のホームページ