シート状電気絶縁材料の誘電特性に関する研究

05E09 春日 香

1.はじめに シリコーンゴムは、ケーブル被覆絶縁・耐熱パッキング材・機器コイルの口出線などの被覆絶縁物や屋外送電線用の懸垂がいし等、交流電界下における絶縁材料として用いられる場合が多く、その高電界誘電特性を把握することは大変重要である。本研究ではシリコーンゴムのシート状試料の高電界誘電特性に関する研究を進めてきた。

2.実験方法 HTV及びRTVシリコーンゴムのシート状試料の厚さ236mmの静電容量とtanδをブリッジ同調手法によって、体積方向と表面方向について測定した。電極系はステンレス製の平行平板同心円状三端子電極系を用いた。体積方向、表面方向共に主電極端部の漏れ容量成分の評価を行った。特に表面方向については有限要素法電界解析により漏れ成分の評価を行った。

次に、2mm厚のHTVシリコーンゴム試料を、50℃の蒸留水に浸した水浸劣化時と、室温・大気中での回復過程の、静電容量とtanδの測定を行った。また、交流損失電流観測手法により、tanδ等の電界依存性を測定した。あらかじめ、試料の劣化過程と回復過程の重さの変化を調べておき、その変化量の0509095100[%]の値となる時間にて測定を行った。劣化・回復過程については、測定の再現性を確かめるため、各々3回の測定を同一試料に対して行った。今回測定結果として取り上げたデータは、2回目の回復過程と、3回目の劣化過程に対するものである。

3.実験結果及び検討 シリコーンゴム試料の体積方向の静電容量は、HTV及びRTVともに、1/(厚さ)に完全には、比例しない。またtanδも1/(厚さ)に対して増加する傾向を示した。体積方向の静電容量は、電極端部の漏れ容量のためC=ε(S/d)(ε:試料の誘電率、S:電極面積、d:試料厚さ)で求めた結果より大きな値が測定された。それを計算式で補正し、電極の直下分のみの容量を求めた結果を、図1に示す。M-Hは主電極−高電圧電極間の、G-Hはガード電極−高電圧電極間の静電容量である。グラフが原点を通る直線となり、数式による漏れ容量評価結果を確かめることが出来た。

表面方向の静電容量については、厚さに対して正の依存性を示した。これについては、数式にて電極端部の漏れ成分を完全に評価することは困難であり、電界解析を用いて、その様子を定性的に確かめることが出来た。

水浸劣化及びその回復過程における静電容量の変化を図2に示す。表面方向については体積方向と比べると、大きな変化は見られなかった。しかし、体積方向の静電容量は、水に浸す時間が長くなると増加した。tanδは逆に減少した。これは、試料が吸水する事により厚さは増加するが、それ以上に比誘電率が大きくなるため、と考えられる。tanδは静電容量に反比例するため、静電容量の増加と共に減少したと言える。回復過程はこの逆の傾向を示した。

4.まとめ RTVシリコーンゴムより、HTVシリコーンゴムのほうが静電容量、tanδ及び交流損失電流ともに、水浸劣化と乾燥回復による影響を大きく受けやすい事が分かった。また、体積及び表面方向についての電極端部の漏れ容量成分を電解解析を含めて、評価することが出来た。