研究概要


流れ場・熱伝導場の形状最適化解析

粘性流体中を移動する物体の形状を抵抗動力が最小となるように決定する問題、あるいは粘性流体の輸送に使われる流路の形状をエネルギー損失が最小となるように決定する問題はエネルギー利用効率を高める観点から工学的に重要です。また、流れ場、熱伝導場などの領域 (形状) 設計に対して、指定した境界あるいは領域において流速、圧力、温度などの状態関数を規定した分布を持つように境界形状を同定する問題 (形状逆問題) は、流体機械等を設計する際に現われる基本的な問題の一つです。
また自然界に存在するものは、機能や環境に適応した形状を創り出す能力があることが知られている。例えば、我々の体内に存在する血管の分岐点では、エネルギー損失がより少なくなるように、すなわち、滑らかな血液循環をさせることができるように血管直径や分岐角度が決っていると言われています。その理由は、血管壁におけるずれ応力が血管成長の刺激となって常に最適な形態をとると考えられています。
名古屋大学(畔上秀幸先生の研究室)との共同研究によって、我々のグループでは、随伴変数を用いた分布系感度に基づく形状決定問題の解法について検討を行ってきました。これまでに基礎的な問題として、定常非圧縮性内部粘性流れ場における散逸エネルギー(あるいは圧力損失エネルギー)最小化問題、ポテンシャル流れ場における流速分布や圧力分布、熱伝導場における温度分布を規定する形状逆問題の数値解析法を提案し、その妥当性を確認してきました。そのときに用いた最適化手法は、領域最適化手法の一つとして提案された力法です。
図は手前から粘性流体が流入し左右の出口から流出する分岐流路の形状最適化に対する解析結果です(現在、豊橋技術科学大学大学院 井藤勝児君のご協力)。左図は初期形状、右図は解析された最適形状の有限要素分割図です。この解析は汎用有限要素解析コード ANSYS および ANSYS-FLOTRAN が利用されています。結果は簡単な Stokes 流れ場の解析結果です。この結果は Murray が 1926 年に提唱した血管分岐における直径 3 乗則(親枝直径の 3 乗は子枝直径の 3 乗の和に等しい)に一致した興味深い解析結果です。

図は 3 次元流路中に置かれた孤立物体に対して、流路の入出口での圧力損失エネルギーが最小となるように孤立物体の形状を決定した解析結果の一例です(現在、豊橋技術科学大学大学院 井藤勝児君のご協力)。左図は初期形状、右図は解析された最適形状です。図は孤立物体付近だけを表示しています。初期形状では球形状ですが最適形状ではラグビーボール状の形状になってる様子がわかります。この解析に対しても汎用有限要素解析コード ANSYS および ANSYSーFLOTRAN が利用されています。

図は飛行機の翼周りの流れをポテンシャル流れ場と仮定して、指定した圧力分布を達成することを目的とした解析結果の一例です(現在、フジユニバンス(株) 山口正太郎氏のご協力)。

図は壁からの放熱促進のために取り付けられた熱交換器フィンの解析結果で、左図は初期形状、右図は放熱面境界長さ一定の条件で放熱量最大化を目的とした最適化形状です(岐阜高専 専攻科 2 年 仲野伸二君のご協力)。
図はタービン翼表面での熱応力を緩和させるため温度平均化を目指した冷却孔の形状決定問題の簡単な解析結果です(現在、アルパイン(株) 小嶋雅美氏のご協力)。左図は初期形状、右図は解析された最適形状です。この解析は汎用有限要素解析コード ANSYS が利用されています。分布は温度分布です。

[数理設計工学研究室][機械工学科][岐阜高専]の各ホームページへもどる
ご意見やご質問をkatamine☆gifu-nct.ac.jp (☆は@に変更)までお聞かせください。