岐阜工業高等専門学校 建築学科 教授 柴田良一
日本経済の基幹産業である製造業は、繊維を出発点として自動車や電気機器と進み、平成元年には電子立国日本として、世界の生産量の半分を占める確固たる地位を確立した。しかしながら、ネットワークやコンテンツが中心となる高度情報化社会に対応した情報化産業においては、米国やアジア各国に遅れを取っているのが現実である。しかしながら日本の製造業の潜在能力は健在であり、産業構造のデジタル化への転換を実現することができれば、最重要課題である製造業復権が実現し、今後の日本の持続的繁栄を、確固たるものにすることができる。
【背景】日本経済の基幹産業である製造業は、80年代に「ジャパン・アズ・ナンバー1」と高く評価され、ものづくり立国としての地位を確立した。しかしながら、高度情報化社会に対応した情報化産業においては、米国やアジア各国に遅れを取っているのが現実である。今後の日本の持続的繁栄には、製造業復権が最重要課題である。
【目的】中小企業におけるデジタル化を困難にしている課題は、人材育成と経費確保である。そこで本研究では2つの目的を設定する。1:現場で必要となるデジタル技術を、技術者が実践してノウハウを蓄積することで人材育成を実現する生産支援の基盤技術の確立。2:試作実験を最小化して効率的な製品設計を実現する数値解析を、オープンソースの無償ツールを基盤とする解析技術の確立。これらによって製造業復権を実現する。
【対象】日本の製造業の強みは、高い技術力を持つ中小企業が協力会社となり、高品質な部品を供給することで、自動車やオートバイなど高品質な製品を生産してきた。社会がデジタル化を加速し製造業にも対応が必要となり、大企業は高度なデジタル化を展開しているが、中小企業では人材や経費の問題で十分な活用が実現していない。
【手法】これらを達成するために、次の手法で展開する。1:初心者でも手軽に活用できるAIツールのソニーNNCとIoTデバイスを用いて、充実した日本語情報やコミュニティの相互支援によって実践的な生産支援を実現する。2:試作実験が不可欠であった落下や衝突に対して、オープンソース化された衝突解析ツールを用いて、デジタル技術の基本となる数値解析による効率的な安全性評価を実現する。
【開発】これらを実現するために、次の開発を行う。1:不良品判別を題材としてソニーNNCで画像認識AIモデルを改善するための方法論を確立し、デバイスに実装する手順を初心者向けの教材としてまとめる。2:解析ソルバーは利用者が解析環境を構築する必要があるが、初心者にも対応可能な構築手順を整備して、ソルバーを活用するモデル作成もプリ処理と結果を可視化するポスト処理のツールを公開する。
【成果】これらの基盤技術は、日本の製造業のデジタル対応にとって不可欠であり、公開された活用情報や自習教材を活用し、本活動で企画する地域の製造業の課題に応える内容の講習会などを実施することにより、中小企業のデジタル技術を活用した高度な設計と生産の実現が可能になる。
以下の4項目の活用が期待される。