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序論

技術革新が著しい昨今、社会はますます情報化が進み、ネット上には情報が溢れ、 私たちの身の回りは便利な機器で満たされている。 その恩恵を受け、豊かで快適な暮らしを営んできたが、産業技術がめまぐるしく発展するうちにユーザである私たちは機器や情報システムに取り残され、 生活を便利にする目的であった産物に振り回されるようになった。

便利に便利を重ねた結果、一つの機器が多くの機能を有するようになったからである。 また、情報技術、産業技術の時代と言えど、全ての人が産業技術を生活の軸にしているわけではない。 その中には、技術を使いたいがどう扱ってよいのかわからないという人も含まれている。 技術に触れる者と触れぬ者との間の隔たりは大きく、それはますます広がる一方である。

この問題を招く結果となったもう一つの要因として、外観重視の傾向があげられる。 個人の持ち物だけにとどまらず、街の建造物の至る所でその傾向が見られる。 外観を重視して、どこがドアノブなのか、どのように出入りしてよいのか、わからなくなったドアもその例である。 また、インターネット上では種々の手続きをWebサイトで行えるようにする動きが近年になり急速に進んでいるが、 あまりにも多くの機能が詰め込まれていたり、 画面一面に情報が溢れていて必要な情報を汲み取れないなど、 初めて利用するものにとって難解なものも多い。 また、なんらかの目的をもって構築されたWebサイトがインターネット上に無尽蔵にあるが、 利用者がそこから何かを汲み取ろうと試みたときに、誤操作を生じやすく、 利用者の手間を要するものが多々ある。

利用者を混乱させる道具は誤操作を招き、本来の道具が持つ目的を果たすことはできなくなる。 利用者が道具の使い方を誤るのは利用者が悪いのではなく、 その道具が使い方を誤るような原因を持っているからであると考えることが出来る。[1] この考え方から、製品の性能や機能を表すユーティリティよりも、 使いやすさを表すユーザビリティが重視されるようになった。

ユーザビリティという概念が明確になり始めたのは1980年代からである。[2] 1980年代から1990年代まで、ユーザビリティはどちらかというと使いにくさや分かりにくさという問題をなくすこととして位置づけられてきた。 Jakob Nielsen氏の概念体系によるユーザビリティが代表的例である。 しかし当時はユーザビリティを考慮することは企業に利益をもたらし得ないとして、 消極的に受け止められていた。 しかし、ISO13407が制定される前後であった1990年代後半には、 ユーザビリティは積極的な意味合いを持つようになり、 ユーザビリティを考慮することは、 製品やシステムに対し、有効かつ効率的に満足を与えるようにすることである、 と考えられるようになってきた。 そして2010年代へ突入した今日、ユーザビリティの持つ意味について考えられることは、 先に述べた時代のニーズに対する回答を与える上で重要な概念の一つになり得ると思われる。

では実際に道具を前にしたとき、どのようにデザインしてどこに機能を持たせればユーザビリティは高まるのか。 本研究ではユーザビリティについて、Jakob Nielsen氏の提唱したユーザビリティの5つの構成要素からその傾向について調査する。

調査にあたり、教育用コンテンツを作成し、実際に使用してもらい、アンケートを行う。 コンテンツ作成にはAdobe社のアニメーション作成ソフトFlashを使用する。



Deguchi Lab. 2014年2月25日