まず図を見ると、どの図においても途中まで「入力パターン数=最大学習成功パターン数」の関係にある。これはつまり、比率を変えても途中まで完全学習ができているということである。しかし、それ以上入力パターン数を増やすと、逆に最大学習成功パターン数は減少していき、入力パターン数が200程度になると、どの比率においても最大学習成功パターン数は10程度まで落ち込んでしまっている。また、完全学習が途切れた後の最大学習成功パターン数の動きは、比率によって多少違いはあるもののどれも急激な減少をしていることが分かる。グラフの形を見ると、10%と90%(図5.2と図5.6)、30%と70%(図5.3と図5.5)など1との比率が対称的なパターン同士はとても似た形をしており、同じような学習がされたと考えられる。
次に、各比率ごとの最大完全学習数に着目する。図では具体的な数値が分かりにくいので、表5.2に各比率における最大完全学習数を示す。そして、これらの値をグラフ化したものを図5.7に示す。なお、最大完全学習数については5.4節で述べたが、実験の際に、一度完全学習が途切れた後に入力パターン数を増やすと再度完全学習ができている場合が稀にあったが、一度完全学習が途切れた後の完全学習というのは不安定な状態であり、不確定なものといえるので本実験では完全学習が途切れるまでの値を最大完全学習数とした。
表5.2を見ると、1の比率が極端に少ないとき(10%、15%)や、極端に多いとき(85%、90%)は最大完全学習数が120程度であるのに対して、1との比率が均等に近づいていくにつれて最大完全学習数が90程度まで減少している。つまり、図5.7のような中央下がりの形になっている。
しかし、この傾向というのは顕著なものではない。もしかしたら最初に乱数で入力パターンを生成した結果、それらの入力パターンの2値が1部分に偏るなどして、たまたまこの傾向が見られるパターンばかりが作られたのではないかと考えたため、同じ実験を乱数の種を変えてさらに2回繰り返した。その実験の「各比率における最大完全学習数」の結果を図5.8、図5.9にそれぞれ示す。2つの図と、図5.7を見てわかるように、中央下がりの傾向というのは確かであると考えられる。入力パターン中に1が10%や90%あるということは、パターンとしては単純な組み合わせであり、入力パターン間の相関値(どれだけ似通っているかを表す数値)も高くなる。パターン間の相関が高い方が記憶できるパターン数が多いことが過去の研究[10]から明らかになっていることから、1の比率が10、90%の方が50%などより比較的学習が成功しやすいため、中央下がりの傾向となっていると考えられる。
1の比率[%] | 10 | 15 | 20 | 25 | 30 | 35 | 40 | 45 | 50 | |
最大完全学習数 | 125 | 120 | 106 | 104 | 100 | 97 | 91 | 94 | 91 | |
55 | 60 | 65 | 70 | 75 | 80 | 85 | 90 | |||
93 | 95 | 99 | 101 | 104 | 110 | 121 | 120 |