逐次学習を行う際には、学習を行うか否かの判断材料となるパラメータは常に変動している。 その影響を調べるにあたって本研究では、過去の研究を元に推測を立てた上で、学習継続中における不応性の作用による忘却の発生とその因果についての調査を試みた。
まず、学習すべき対象として与えるパターンの増加に比例して忘却の頻度が高くなる現象が見られた。 そしてその際には先に入力したもの、他のパターンと似たもの、また、これらの要因等から学習の程度が弱いままのものがより忘れられ易いことが判った。 これの対処としては、パターンの入力順を変えること、学習を繰り返してその強度を上げることが主なものとして考えられる。
その根拠となる一つは、先に入力したものほど他のパターンの影響が大きくなり忘却が発生し易い現象である。 類似パターンは互いに影響を与え合い、また、自身の後に入力されるパターンが少ないもの程自身の学習を崩される要素が少ないため、これは当然といえる。
今一つは、忘却が生じる中でも、パターン全体に対する学習は強まっていく過程が見られたことである。 これは、一度記憶した内容を保持する働きを不応性が担うために、学習を繰り返すことで徐々にその記憶が崩れにくいものになって行く結果である。
しかしネットワークの学習全体を眺めた場合においては前述の、時間と共にネットワーク全体の学習が強まって行く現象と併せて考えれば、こういった忘却によって学習の効率が著しく悪くなるとは言えず、対策無く学習を為す場合であっても憂慮すべきであるとまでは言い難い。
但し本研究では5.3節に述べたように、ホップフィールド型ネットワークに学習すべきパターンを入力し、同パターンを出力し続ければ学習成功と判断する、というように定めた上での実験であるため、本実験では学習の強度つまり記憶の崩れにくさに対する考慮は不足している。 また、逐次学習を用いたが故に、常に学習の判断を下しそれが繰り返されることとなるので、滞りなく学習が進んでいる場合においてもネットワーク内部の様子は目まぐるしく変化し続けている。 これらの要因のために、多くの情報を欠損無く記憶させ得るバランスを保つことは難しい課題であると言える。
また、過去の研究報告[7]を参考に、今回不応性の影響の度合いを定めるパラメータ を2.0という一定値として実験を始めた。
しかしより良い学習効率を求めるならば、このような条件に対する更なる検討が必要である。
そのため、
の値を変化させ、学習の様子を観察した。
結果としては、2.0よりも若干大きく
の値を定めることで学習の効率は上がることが判った。
しかし6.2.2節の結果が示すように、学習させるパターンによってネットワークの振る舞いは変わってくるので今回の結果は普遍的なものとは言えない。
また、学習ごとに最適な
を速やかに定めるためには更なる調査が必要となるだろう。
謝辞