本研究では動的想起にとっての適切ながどの程度であるのかを明らかにすることを目的として、実験を行った。
素子数と適切なの関係を調べるために、素子数を100から350まで10刻み、
を0.010から0.050まで0.001刻みでそれぞれ変えて計306通りについて、学習させたランダムパターンを動的想起によっていくつ出力されるかを調べた。また学習させるパターンを変えて合計で5種類のパターンで同様の実験を行った。その結果をまとめると以下のようなことがいえる。
まず、動的想起にとって適切なは、素子数が少ないときには低く素子数の増加に従って高くなり、素子数が250以上程度のときには0.036程度となる。
しかし、中には素子数の増大とともに適切なが小さくなるパターンや、素子数が250以降のときに0.024程度になるものもあった。実験に際して変更したものは学習させるパターンのみなので、原因がここにあることは明らかである。つまり、どのパターンでも最も動的想起状態を改善できる
は存在しないといえる。パターンがどういった組のときにこういった推移となるかは、もっと多くの入力パターンについて調べなければ断定はできない。ただ、素子数が100と少ないときには0.010から0.046と大きくずれていたのに対して、素子数が350のときには0.024から0.038とずれる幅が小さくなっていた。動的想起の結果が学習させるパターンに左右されるのは、次の理由が考えられる。素子数が少ない場合にはパターン中のひとつの値が全体に対して占める割合が大きい。よってそのぶんだけ、パターンから受ける影響も大きく、結果として適切な値のずれも大きくなったのである。素子数が増えることでずれが小さくなったこともそれで説明できる。
次に、適切なを選んだ場合には、動的想起に成功するパターン数は素子数と直線関係にあるらしいことがわかった。ただし、学習の場合が素子数の増加の90%程度であるのに対して、想起の場合には素子数の増加に対して67%程度しかなかった。
今後の課題としては、先にも述べた通り素子数が大きい場合に適切なは0.036程度の値をとるが、なぜこの値が適切であるのかを明らかにすることや、最大想起成功数と素子数とがなぜこのような関係となったのかなどを明らかにすることが挙げられる。
最後に、本研究を進めるに当たり、多大な御指導を賜わりました出口利憲先生に深く 感謝するとともに、同研究室にて助言をいただいた専攻科の松野圭将氏、 共に学んだ木村俊貴氏、西川久美子氏、水谷健介氏に厚く御礼申し上げます。