昨今「脳」に関する関心が増大している。 特に生物の「脳」は単純な行動だけでなく、 記憶・学習・運動制御等多種多様な情報処理を行うことが出来る。 そこで、この「脳」をモデル化しコンピュータにより実現できれば、 従来は処理しきれなかった問題にも対応できると考えられた。 現在では複雑かつ柔和な脳機能の利用により情報工学にとどまらず、 ロボット工学、生物学、経済学など幅広い分野への応用研究が行われている。
ニューラルネットワークとは脳の神経回路網をモデル化したものである。 カオスニューラルネットワークはこの一種であり、 構成されているニューロンモデルが異なる。(詳細は第2章にて詳述) 本研究はこのカオスニューラルネットワークを用いて脳の連想記憶機能を 工学的に模擬するために必要な学習に関するものである。
連想記憶とは脳が記憶・想起を行う特徴的な方法をいう。(詳細は第3章にて詳述) これを模するためには、まずネットワークに学習を行い情報を記憶させる必要がある。 そこで本研究室では逐次学習という学習法を提案している。 これはネットワークを構成するニューロンそれぞれに学習の必要性を判断させる学習法である。 逐次学習は現在までの研究で従来用いられてきた相関学習に比べて 多くのパターン画像を学習することができる事が明らかになっている[1]。
本研究ではその中で結合荷重の変化量(以下とする)と不応性(以下
とする)のパラメータに着目した。
この2つは逐次学習において学習の必要性の判断に用いられていることからも、
学習に大きな影響を与える事は明らかである。
まず、に関してはネットワークの規模や、
学習させるパターン数に対してどのような振る舞いをみせるのかを検討した。
先の研究でこれらに対する関係性は明らかになったが、
過去の研究よりパターン画像に偏りが存在すると学習に影響する事が明らかになっている
[2]。
そこで、複数の乱数の種によって生成されたパターン画像を用いた。
次に、学習中のデータを検討した結果、学習を前半と後半に分けると前半に学習が多く進み、 一方で後半では学習があまり進んでいなかった。 そこで、結合荷重の変化量を一定値ではなく変化させ学習を行った。
最後に、と
にはどのような関係性があるのかを調べた。
過去の研究で
については検討がなされ、最適な値が導出されている[3]。
しかし、当時の
の値は先の研究で明らかになった適切な
の値とは大きく異なっている事が明らかになっている[4][5]。
加えて逐次学習は両パラメータに依存している事からも、再検討が必要と考え実験を行った。
さらに実験環境の充実化により学習させるパターン数による違いも併せて検討した。