この研究では、カオスニューラルネットに時系列信号を想起させることを試みた。 研究方法は、始めに、 従来のニューラルネットワークに教師信号を学習させ、 この学習により得られた結合荷重を カオスニューラルネットワークの結合荷重として入力し、 曲を想起させることにした。
まずは、従来のニューラルネットに想起させた。 入力層に10音入力し学習させ、 学習後のパラメータを曲を想起させるプログラムに入力すると、 教師信号であるカエルのうたを完璧に想起することができた。
一方、内部記憶を持つニューラルネットでは、 カエルのうたを学習することができなかった。
次に、ニューラルネットの学習後のパラメータと、
カオスニューロンの特徴を決めるパラメータ を入力して、
カオスニューラルネットに想起させてみた。
この時の
は、0.0526,0.0519,0.0522である。
この想起結果は、1周期目は、
曲の最期の方だけが少しおかしいほぼカエルのうたであったが、
2周期目以降になると、カエルのうたに多少似ている新しい曲を想起した。
この結果を受け、もう少しカエルのうたに近付けるにはどうしたらいいかと
考えた結果、kmを0にすることにした。
この時の は、0.0000,0.0519,0.0522である。
この結果、1周期目は完璧にカエルのうたを想起した。
しかし、2周期目以降になると、だんだんとカエルのうたから離れていき、
カエルの歌に多少似ている新しい曲を想起した。
次に、上の実験から得られた想起結果をFFTし、
教師信号との相違をさらに詳しく比較した。
もちろん、ニューラルネットの想起結果のFFT結果は
教師信号のFFT結果と全く同じである。
カオスニューラルネットのFFT結果は、
が0.0526,0.0519,0.0522の場合は、
低周波領域の音は全く違うが、
高周波領域の音は多少似ていることがわかった。
総合的に見れば、教師信号と多少似た所がある
新しい曲を想起したといえる。
一方、
が0.0000,0.0519,0.0522の場合は、
1周期目は、教師信号と同じ波形をしており、
耳で聞いたのと同じように完璧に想起したといえる。
2周期目以降になると、全体的に誤差が大きくなっており、
カエルの歌からはだんだん離れていっていると言える。
総合的に見れば、
が0.0526,0.0519,0.0522の場合よりも
さらに教師信号と似ている所がある新しい曲を想起したと言える。
今後の課題として
があげられる。
謝辞
最後に、一年間本研究を進めるにあたって終始多大なご指導をいただきました 出口利憲先生に深く感謝いたします。
また、同研究室において共に学びあい、 UNIXのことやプログラムについて有益な助言をしてくれた 専攻科2年生の浅川新也氏、山田博及氏、専攻科1年生の畑中誠氏、 本科の寺井豊君、廣瀬将丈君に厚く御礼申し上げます。