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カオス

カオス(Chaos)とは、日本語に訳すと「混沌」や「秩序のない」といった意味になる。 カオスそのものは19世紀末から研究されてきた。 1963年にローレンツ(Lorenz)によって見出されており、 熱対流を記述する自律系が、非周期的な振動を起こすことが発見された。 しかし、一般的に広く認知されるようになったのは1970年半ばのことで、まだ日は浅い分野ともいえる。 混沌の名の通り、カオスを明確に定義することが大変難しく、この分野は未開拓である[4]。

カオス現象は、自然物、人工物を問わず非線形システムであれば当たり前に生じるものである。 カオス現象の例を挙げると炎の揺らぎや落下している木の葉の動き、風の強さやそれによってなびく旗の動きなどがあり、日常生活の中にもさまざまなカオスを観察することができる。

また、カオスは生体の活動に対しても重要な役割を占めている。 例えば、心臓の鼓動などがあげられる。 心臓の鼓動は常に一定ではなく、強くなったり弱くなったりする。 この鼓動の強さの変動は予測できないもので、 自然の環境変化に対し、一定の鼓動である時よりも柔軟に対応することができている。 脳の情報処理に関してもカオスが関係していると考えられている。 生きている状態を保つために、脳は外界の環境を様々な知覚情報として取り込み、それを処理している。 これは、ニューロンまたはニューロンの集団が単一の機能を持つように構築されているわけではなく、複数の機能を表現できるように構築されている。 これは、カオス的遍歴と関係し、人工ニューラルネットワークを用いたカオスによる情報処理の可能性もあるとして、津田らによって勢力的に研究されている[5]。

具体的なカオスに例として、式(3.1)のような系を考える。


\begin{displaymath}
x_{n + 1} = 4x_n(1 - x_n)
\end{displaymath} (3.1)

図 3.1: カオスを示す関数の入出力特性
\includegraphics[scale=1.2]{epsfile/chaos.eps}

式(3.1)の入力 $x_n$ と出力 $x_{n+1}$ の特性を表したものが図 3.1であり、これはロジステック写像と呼ばれる一次元カオスである。

図 3.2、図 3.3はこの系の入力と出力である。 図 3.2$x_0=7.0000$ 、図 3.3$x_0=7.0001$ と初期値を決めた。 このようにわずかに値が異なるだけで、系の振る舞いは大きく影響を受けることがわかる。

図 3.2: $x_0=7.0000$の時の挙動
図 3.3: $x_0=7.0001$の時の挙動
\includegraphics[scale=1.2]{epsfile/justseven.eps}

\includegraphics[scale=1.2]{epsfile/nearseven.eps}



Deguchi Lab. 2015年3月4日