実験2では、気象庁の行う天気予報の予測精度と大きく違うことが分かった。これは気象庁が複数地点のデータを総合的に予測している事が考えられると述べた。従って、周辺数ヶ所の気象観測データも同時に自己組織化マップに入力して学習を行うことで、さらに細かい天気パターンができることが考えられる。ただし、その時に問題となるのは、自己組織化マップの学習による入力データのパラメータ数についての空間計算量は
、時間計算量は
となってしまうため、観測データのパラメータ数が多くなると、自己組織化マップへの学習の際に容量や時間がかかってしまうということである。
実験3の結果より、春や秋は天気パターンが同じになりやすいため予測精度が悪くなっていることが分かった。すなわち、季節による天気パターンの分類を行うと、より予測精度が向上する可能性が高い。季節によって天気パターンを分類する方法として、自己組織化マップを教師付き学習に応用した、学習ベクトル量子化(Learning Vector Quantization : LVQ)を気象予測の学習アルゴリズムに導入することが挙げられる。[3]教師信号を日付による季節とすると、例えば季節が春のある日付を入力した場合、競合層のマップ上のデータにおける勝者ニューロンに属するグループが「秋」ならば、学習させないか参照ベクトルを入力から遠ざけるように学習させる。これによって季節によるパターン分類も加わり、春や秋の季節の違いも区別することができる。
実験4の結果から、東京管区気象台の観測データによる予測結果では観測データの冗長性が発見された。特に気圧については先述したように天気パターンの分類としては有効なものではない。このような天気パターンの分類に影響を受けさせる観測データのパラメータを減らすことが予測精度の向上につながる可能性がある。ただし、観測地によってはパラメータを減らすことによって十分な気象に関する情報を自己組織化マップが得られず、予測精度の悪化につながる可能性がある。