ニューロンは細胞の一種であるから、細胞の内部は細胞膜(cell membrane)によって外液と隔てられている。細胞膜の厚さはおよそ5nmで、2層の脂質分子から構成されている。
ニューロンの細胞膜の内外ではつねに電位差があり、この電位差を膜電位(membrane potential)とよぶ。
細胞内部の電位は、細胞外部の電位を基準にすると、通常-70mVの電位を維持していて、これを静止電位(resting potential)とよぶ。
静止電位は、細胞膜のイオンチャネルの働き(特定のイオンのみを通したり通さなかったりする)によって、K イオン濃度は細胞内のほうが高く、Na
イオンとCl
イオンの濃度は細胞外のほうが高いことにより生じる。
この膜電位を、外部からの作用で正方向に変化させ(脱分極)、-50mV程度にすると膜のイオン透過性が変化し、膜電位が正まで達して、再び元の電位に戻る。 このように、膜電位がインパルス状に変化したとき、細胞が興奮した、または発火したという。 膜電位の変化は、始めは膜の局所的な部分で生じるが、やがて膜の興奮部位は軸索に沿って伝搬していく。 膜電位を変化させたとき、膜が興奮する臨界の電位の値を閾値という。 脱分極の起こし方によらず、インパルスはほとんど同一の波形を有し、一度閾値を越えれば完全なインパルス波形になる。 これを``全か無かの法則''という。 また、軸索には波形整形作用があり、長い軸索を伝搬してもインパルス波形はくずれない。
このことから、神経回路網において情報を担うのは、インパルスの波形ではなく、頻度であると考えられる。 例えば、網膜から中枢神経系に至る経路では、網膜に入る光の強さが軸索上を伝搬するインパルス頻度に変換され中枢神経に送られると考えられる。
しかし、細胞には一度発火するとその直後はいくら脱分極を起こしても発火しない時期(0.5ms)の絶対不応期と、絶対不応期の後の閾値が高くなって発火しにくくなる時期の相対不応期があり、インパルス頻度には上限ができる。 また、他の細胞からの入力がないにも関わらず自然に発火する自然発火があるが、そのメカニズムや意味は分かっていない。