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第1章 序論

近年,コンピュータの研究・開発の進歩は めざましいものであり,人工知能やニューロコンピュータの研究が 注目されるようになっている。

ニューロコンピュータは,現在主流のノイマン型コンピュータと同じ 1940年代に発案され,開発・研究が衰退した時期もあったが 近年また注目されるようになった。 これは,コンピュータの機能を 人間の頭脳活動に近づけようとしている分野である。 ニューロコンピュータは現在,学習できることが実証されており,音声・文字などの 認識成功,実用例が報告されている。

ニューロコンピュータは,人間の脳細胞をモデル化したニューロンという素子が 互いに結合したニューラルネットワークのことを主に指し, 現在マッカロックとピッツによる最も単純で代表的な ニューロンモデルを用いたネットワークが主流である。

我々の研究室では離散時間モデルのニューラルネットワークを使い, 差分方程式のダイナミクスを学習させることを行ってきた。 その中で,二つの差分方程式を一つのニューラルネットワークに学習させるために, リカレントネットの一種である 内部記憶を持つニューラルネットワークを提案した。 このニューラルネットワークは精度はやや落ちるものの, ほぼ差分方程式のダイナミクスを学習できており, 内部記憶の中に差分方程式の情報が うまく記憶できていると考えられる[1, 2]。 そこで,その内部記憶の中に気温変化情報を記憶することが出来れば気温予測が 出来るのではないかと考えた。

本研究ではそのニューラルネットを使い,気温予測をさせた。 具体的には,離散時間モデルの内部記憶を持つ階層型ニューラルネットワークに バックプロパゲーション法という学習法を用い, C言語で気温変化を学習させるプログラムを作成し,学習を行なった。 比較のため,普通の階層型ニューラルネットワークにも学習をさせている。 そして,それらの学習結果および実験から 内部記憶を持つニューラルネットワークの気温予測に対する適応を考える。

本論文では, まず第2章で研究対象であるニューロンとニューラルネットワークについて述べ, 第3章では,学習法として使用したバックプロパゲーション法と バックプロパゲーションの内部記憶を持つニューラルネットへの応用を説明する。 そして第4章では,気温学習を行ない階層型ニューラルネットと 内部記憶を持つニューラルネットの気温予測及び実験を示し, 内部記憶を持つニューラルネットの学習効果, 気温予測に対する適応について考察をする。 最後,第5章にまとめとして結言と謝辞を記す。 また,巻末付録には 実際使用した 「階層型ニューラルネットの気温学習プログラム」及び 「内部記憶を持つニューラルネットの気温学習プログラム」 を掲載する。



Deguchi Toshinori
Tue Feb 23 15:28:33 JST 1999