ちょんぼT冨

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プロローグ
 麻雀は四種類の面子と一種類の対子を集めるゲームです。たとえば
東東東、三筒三筒三筒、五草六草七草、三萬四萬、二筒二筒と手の中にあれば何待ちですか。はい、わかる人。
 ピンポン。そうですね。二・五萬待ちですね。それでは
東東東、三筒三筒三筒、三萬四萬五萬六萬七萬、二筒二筒
では何待ちですか。はい、わかる人。
 ピンポン。そうですね。二・五・八萬待ちでしたね。それではこれはどうでしょう。
東東東、三筒三筒三筒、三萬三萬三萬四萬五萬五萬五萬 ではどうでしょうか。  ちょっと難しかったですか。答は二・五萬、三・六萬、四萬です。二から六まで全部あがれるんでしたね。これを
「あんこのサンドはみな食える」というんでしたね。ウンコのサンドじゃないですよ。
 一番巨大なあんこのサンドは九蓮宝燈というんでしたね。
 それでは、この待ちはどうでしょうか。
東東東、三筒三筒三筒、二萬二萬二萬三萬四萬、二筒二筒
 よくわかりましたね。あなたならチョンボはしない。二・五萬と二筒ですね。
今日は、この待ちに関係した話です。

奈良県橿原にて
 電気工学科では退官される先生がいる年は、三月の終わりに一泊旅行をしています。今から八年くらい前に、私が幹事になって奈良の飛鳥地方へ一泊旅行を計画しました。
 橿原神宮の正面にあるホテルで宴会を開き、どんちゃん騒ぎをしたあと、各自の部屋に入り、そして、私たちはあの思い出の麻雀を始めたのです。
 そのときのメンバーは私の下家には現在岐阜大学に移られたF田先生(福岡先生の師匠ですね)、そして対面に話題の重鎮T冨先生、上家には名工大にかわられたT下先生という壮々(何が?)たる顔ぶれでした。
 東一局は私の親でした。他の学科の先生とはよく麻雀をしていましたが、電気では初めてでした。他の先生からの噂で私が非常にうまい(強いのではありません)ということを他のメンバーは知っており、私も実力を見せつけてやろうと気負っていました。立ち親というのはやりにくいもので、手も余りよくないので、なんとか安手であがって次のチャンスを待とうと思っていました。その矢先に対面のT冨先生から、リーチがかかってしまいました。
「テンパイ即リーですか。かないませんね」
等とつぶやいていたら、なんとT冨先生
「リーチ、一発ツモ、ドラ一、満貫」
等とのたまうではありませんか。親は行ってしまうし、4千点も払わねばならないし、かなわないなと思いながら、T冨先生のあがった手牌を見ました。

九筒九筒九筒、五草六草七草、四萬四萬四萬五萬六萬、四筒四筒

こんな手牌で七萬をつもっていました。
四・七萬、四筒の変則三面張ですね。あきらめて四千点を払おうとしました。しかし、ふとある予感がして、ひょっとしたら四筒待ちを知らないのではないかと思いました。残念ながら先生の捨て牌の中には四筒はありませんでしたので、フリテンのチョンボにはなりません。そのとき、偶然に私の手牌の中に四筒があったのです。私の心の中で悪魔のささやきが始まりました。ちょっとからかってみようなんて。私は右手の中に四筒を握り、おもむろに先生の手牌を確かめるような動作で両手を伸ばし、
「先生、それは何待ちですか」
と尋ねながら、そっと右手に握った四筒を先生の捨て牌の中に入れてしまいました。案の定
「四・七萬待ちだよ」
という返事が返ってきました。
「先生、それは四筒でもあがれますよ。四筒は、あ!先生ここに捨ててますよ。フリテンですね」
と私。
「あ!あれ!!」
とT冨先生は、しまったという顔。
両隣のF田先生も、T下先生も
「チョンボだ!」
と納得していました。
しばし、沈黙のあと、私が
「いや、先生、冗談です。この四筒は私があとでいれたものです」
と正直に告白しました。(このまま、だましたままにしようかとも思いましたが、さすがに私も一応聖職にあるわけであり、良心の呵責にさいなまれるのもかなわないし、なんといっても高専の先生の中では最も尊敬できる、敬愛すべきT冨先生に申し訳ないと思い真実を告げました。)
「そうだろう。わしゃ、四筒を捨てた覚えがなかったんだ。あぶないあぶない。よかったよかった」
その後気分をよくした先生はあがりまくり、いたずらをしてちょっと良心の呵責にもさいなまれて私は振り込みまくり、私の大惨敗に終わりました。

エピローグ

麻雀は精神的な要素が多分に入ります。あまりにも品行方正な先生がまじめにしまったという顔をしているのを見て、冗談にも悪いことをしてしまったなという反省もあり、大惨敗です。私が負けたショックのあまり、布団に潜り込んですぐ寝てしまったとか、枕が涙で濡れていたとか、布団がひくひくと上下に揺れていたとかT冨先生はその後この話が出るたびにおっしゃってましたが、何をいわれても返す言葉がありません。

こんなことを書いていいのかな。
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