電気絶縁材料の接触角の測定方法

 

岐阜高専 所研究室

 

 高分子電気絶縁材料の屋外絶縁劣化診断指標の一つである撥水性について、接触角と表面エネルギーの関係と、接触角の主な測定方法を以下に示します。

 

接触角と表面エネルギーの関係

 

 固体表面に対する液体の水の吸着現象を固体の水による濡れと呼び、接触角は固体の液体による濡れを表す最も直感的な尺度であります。また、塗れの強さというのは固体表面と液体との親和力に他なりません。

 今、付着の仕事をWa(Work of adhesion)とすれば、これは断面が単位面積の液体柱と個体柱とをその接触面から引き離す仕事で次の式で与えられます。

   Wa=σs+σl−σsl

ここで固体、液体の表面張力をそれぞれσs、σlとし、σslは固体と液体の界面張力です。また、固体と液体の接触角をθとするとYoungの式より

 

という式が成り立ちます。

 

 接触角の測定方法

(協和界面科学鰍フ接触角計の資料より)

 

 現在、知られている主な接触角の測定方法を紹介します。

  1. 液滴法‥頂点の高さ、水滴の半径を直読し、θ=2arctan(h/a)より接触角を求める。
  2. 転落法…固定した試料を傾斜させ液滴が滑り始める時止め、そのときの各角度を求める。ただし、蒸発が無視できるものに限り、無視できないものに対しては写真撮影などを用いる。
  3. 傾斜法…試液中に測定体を立て、徐々に傾斜させ左面にメニスカスが無くなった時止め、そのときのθを測定する。棒状の物体が適する。
  4. 佐々木の方法…たとえば半径rの一様な太さの試料をhの深さに水に浸し、Pの揚力を上向きに支えて釣り合わせた場合

   P+πrρgh=M+2πrσ ・cosθ

   ただしρは水の密度、Mは試料に作用する重力、gは重力の加速度である。したがって

   σ・cosθ=( P+πrρgh−M)/2πr

   この式からσ・cosθすなわちθがもとめられる。

 

 

 

STRI法(スプレー法またはHC法)

(STRI:Swedish Transmission Research Institute)

 

この方法は試料表面に水霧をスプレーして、試料の撥水状況を上から見て、水滴の輪郭の形状や分布形状によって撥水性クラス( Hydrophobicity Classification )を表1の様な数段階に分けて評価するものです。この方法を用いれば、劣化後の試料表面が荒れ、表面状態が均一でなくなり接触角に対する測定場所の影響が大きくなるという接触角を測定する場合に予想される欠点が克服されます。

 

表1.撥水性のクラス分類(HC)の基準

 HC

定 義

写真

個別の水滴のみが形成される。

大多数の水滴のθが、θ=80°かそれ以上である。

写真

個別の水滴のみが形成される。

大多数の水滴のθが、50°<θ<80°である。

写真

個別の水滴のみが形成される。

大多数の水滴のθが、20°<θ<50°である。

普通これらは、もはや円形をとどめていない。

写真

個別の水滴と、濡れた細路(水の流れた跡)の形成が見られる。(この状態ではθ=0°である。)

完全に濡れた部分の各々は2p以内である。またそれらの合計は、テスト範囲の90%以下である

写真

いくつかの完全に濡れた部分が2p以上となるが、それらの合計はテスト範囲の90%以下である

写真

濡れた部分が90%以上となる。すなわち、少しは濡れていない部分(点状やトレース状)が見られる。

 

テスト範囲を完全に濡れた水膜が覆い続けている。

 

 

 

画像処理による撥水性や接触角の観測

 現在はインターネットよりダウンロードしたソフトとSTRI法によりレベル1〜7に分類されたサンプル画像を用いて、STRI法を用いた画像処理の手法を本研究室で開発中である。現在測定しているシリコーンゴム試料にもこの画像処理を適用するため、処理に適したパラメータや処理手順を検討中である。画像処理ソフトには「NIHImage」を用いている。

 

インターネットよりダウンロード可能な画像処理ソフトについて以下に紹介する。

 

1.bmobe1

 食肉ロースの中の油の割合を取り込んだ画像より検出するというものである。このソフトをストリー法に用いることは画像の取り込み方法やパラメータの数また、ロースの油分検出専用に近いことなどを考慮すると難しい。

 

2.Lia32 For Windows95

 葉の画像から葉面積測定、色解析、LAI推定を行うためのソフトである。このソフトも上記のソフトと同様、葉の画像解析専用と言うところが強いためストリー法への適用は難しい。

 

3.NIHImage

 現在使用しているソフトである。上記の2つのソフトに対しこのソフトは画像解析全般に対しての使用が可能である。

 メニューのAnalyzeのMeasureを選択することにより、選択範囲の面積とグレー値の平均を計算し、結果をInfo, Resultsウィンドウに表示する。加えて、Optionダイアログボックスを使うと、周径などのほかの測定も行える。また、Show Resultsで測定結果をリスト表示できる。

 メニューのOptionのThresholding(閾値化)によりグレーレベルに基づいて、関心のある部分と背景を分離することができる。閾値以上の部分は黒、背景の閾値以下の部分は白で表示される。この状態でMeasureやAnalyze Particlesコマンドを使って面積やグレー値を測定すると、背景のピクセルは無視される。閾値を変えるには、LUTツールを使ってLUTウィンドウの中のblack/whiteの近くをクリックして、ドラッグする。閾値処理をうまく行うためには、Subtract Backgroundコマンドを使って、不均一な光源の効果を除去する必要があるかもしれない。

 さらに、Angle Toolを用いることで1点を通る2本の線のなす角度を測定することもできる。

以上のことを考慮すると水滴のしめる面積や接触角がパラメータとしてあげられる。