電気絶縁材料の高電界誘電特性解析システムの改良

04E34 松原 健次

1.はじめに 本研究室では電気絶縁材料に交流ランプ波形を印加して、その損失電流応答からtanδ等の誘電特性を評価している。本年度は、一昨年までの測定系を再構築し、新たに本測定系の線形性や伝達関数をより詳細に評価した。ことにより、従来より厚いシリコーンゴムのシート状試料の高電界誘電特性測定に際しても、より正確な測定系の伝達関数によって波形解析や線形性の補正をすることが可能となる。

2.伝達関数の測定方法 交流損失電流測定系の入出力特性において、周波数特性と線形性に対する測定を行った。前者の周波数特性に関する測定については、より正確な測定値を得るために周波数を15200Hz]、150400Hz]、3904000Hz]とスイープさせた入力を測定系に与えて、それらの応答を測定した。後者の線形性に対しては、測定系に交流ランプ波形状の微小電流を入力した時の測定系の応答により測定した。測定は、共に検出増幅器のゲインが6106)と5105)の設定時のみ行った。

3.実験結果及び検討 周波数スイープ波形応答から得られたゲイン5の伝達関数を図1□に示す。図より、検出増幅器のゲインを一定にしておいても入力電流の周波数150Hz]のあたりに応答のピークが存在することが分かる。この検出波形データを伝達関数として用い、その逆関数により「FFTW97」によって入力波形を波形解析した結果を図1△に示す。補正によって周波数に依らず値がほぼ一定になった事が分かる。測定系の線形性に対しては、補正前後のゲインの変化を図2に示す。図から線形性補正されたゲインが、補正前と比べて印加電界に対してほぼ一定になっていることが分かる。次に、測定系の再構築と今回測定した伝達関数による補正が正しく行われていることを、交流損失電流波形解析用システムに三角波状の信号波形を入力することにより検討した。その結果を図3に示す。波形解析により入力波形形状を求めることが可能であることが確認される。

1 ゲイン5の伝達関数

2 線形性の補正結果

3 三角波状の信号入力時の入力波形解析結果

4,まとめ 一昨年度までの本研究室の測定系を再構築し、新たに伝達関数を測定し直した。測定系の再構築において従来の伝達関数と本年度新たに測定した伝達関数には多少の異なりが生じていることがわかり、伝達関数の見直しが有効であったと言える。今年度、実測定に用いたシリコーンゴムのシート状試料の測定に際して、その容量が非常に小さいにも関わらず、測定系の一部であるキャパシタンスブリッジ同調時のtanδと応答波形の解析結果より得たtanδの変化がたいへんよく似ていたことから、本高電界誘電特性解析システムによる解析が、より正確に行われることが確かめられた。