シリコーンゴムの吸水劣化と表面エネルギーの

変化に関する研究

06E08 勝 勇樹

1.はじめに シリコーンゴムは、ケーブル被覆絶縁、耐熱パッキング材などの被覆絶縁物や屋外送電線用の懸垂がいしとして用いられ、耐老化性、耐水性、耐コロナ性、耐油性、耐熱性、耐寒性などに優れている。また、電気的性質が良好である。本研究では、屋外絶縁物の劣化を研究対象とするため、RW、HW、HDシリコーンゴムを試料として、その浸水劣化、乾燥回復過程における撥水性の変化について調べてきた。

2.試料及び実験方法 大きさ60×50×6mm3の上記試料を用いて、5℃、常温(15℃±5℃)、50℃の蒸留水に浸し、試料の重さと接触角、試料を浸した溶液の表面張力と導電率の変化を測定した。試料の重さは、上皿電子分析天秤で測定し、試料を5%酢酸で洗浄した後を100%としてその増減を調べた。表面張力は、液体表面張力計で測定した。試料中の油分(LMW)の溶出を正確に測定するために、測定前の溶液を、試料を入れたまま(2分間程度)撹拌した。接触角の測定は、水平に置いた試料の上に注射器で蒸留水水滴を落とし、マイクロスコープカメラで拡大し、モニター画面上から直接分度器で測定した。導電率の測定は、液体導電率計で測定した。
 水浸劣化過程では、試料を浸した溶液を一定時間ごとに冷蔵庫や恒温槽から取り出し、試料重さと接触角、水浸液の表面張力を迅速に測定した。導電率は、水浸劣化過程終了後に測定した。乾燥回復過程では、水浸液から取り出した試料を室温大気中で保存し、一定時間ごとに重さと接触角を測定した。

3.結果および考察 図1にRW、HW、HD試料の50℃の蒸留水水浸における重さの変化を示す。水浸劣化過程では、試料を浸してから30時間程度までは急激に増加し、その後もゆっくりと増加した(RWを除く)。他の温度の結果より、吸水は水浸温度が高いほど速い。試料別でみると吸水量はHD>HW>RWとなった。乾燥回復過程では、最初の90時間程度で急激に減少した。この回復特性は、試料の種類や水浸温度にあまり依存しない。
 図
2には試料を浸した水浸液の表面張力の変化を示す。表面張力は、水浸温度が高いほど低下した。試料別でみると表面張力の低下量はほぼHD>HW>RWとなった。
 図3に接触角の変化を示す。これをみると、水浸劣化過程においては、最初の
30時間程度で急激に下がり、その後も徐々に低下する。乾燥回復過程においては、最初の90時間程度で急激に上がっており、初期値以上に回復する。これらの変化は吸水量に対応している。導電率は、蒸留水の3μS/cmから水浸劣化過程により50μS/cmまでわずかだが増加する。

4.まとめ 水浸劣化過程において、HDが最も吸水劣化しやすく、RWが最も吸水劣化しにくく、HWはそれらの間となった。また、水浸温度が高いほど吸水と、LMWの溶出が多い。撥水性は吸水とLMWの溶出により低下する。乾燥回復過程において試料の重さと撥水性の回復は、試料の種類や劣化時の水浸温度に依存せず、良好な回復を示す。