ゴム試料の撥水性の劣化および回復過程と誘電特性の関係
07E06 栗本 照
1.はじめに
シリコーンおよびEPDMゴムは、ケーブル被覆絶縁、耐熱パッキング材や電力送電線用の屋外絶縁用がいしとして用いられ、ともに、耐熱性、耐水性、耐老化性、耐オゾン性などに優れている。また、表面漏れ抵抗が高く、電気的性質が良好である。本研究では、高分子絶縁材料の劣化を研究対象とするため、海外で実際に5年ほど屋外絶縁用ゴムがいしとして使用されていたHTVシリコーンゴムがいしと、EPDMゴムがいしの笠部分を試料として、その水浸劣化、乾燥回復過程における撥水性と誘電特性の関係について調べてきた。2.試料及び実験方法
外直径15.5cm,内直径6cmの笠部分を12等分し、10g程度の小片に切り出した上記試料を用いて、75℃,98℃の蒸留水と40℃のヘキサンに浸し、試料の重量と接触角、水浸液の表面張力の変化を測定した。試料の重量は、上皿電子分析天秤で測定し、試料を5%酢酸で洗浄し、1日乾燥させた後を基準としてその増減を調べた。また、試料中の低分子量成分(LMW)の溶出を確認するため、測定前の水浸液を試料を入れたまま十分に撹拌し、水浸液の表面張力を液体表面張力計で測定した。接触角の測定は、試料上面を水平にし、その上に注射器で蒸留水水滴を3〜5個落とし、マイクロスコープカメラで拡大し、モニター画面上から直接分度器で測定した。3.結果および考察
図1にHTVおよびEPDM試料の75℃での水浸中の重量変化を示す。水浸劣化過程では、試料を浸してから数日の間は試料の重量は増え続ける。しかし、その増加はある程度で飽和し、その後は減少に転じる。それは、吸水による重量の増加分よりも、試料からのLMWの溶出分が上回っていくためと考えられる。重量増加の早さをみると、HTVのほうがEPDMより早く、温度が高いほうがHTV,EPDM共に早い。また、水浸液の表面張力は試料からのLMWの溶出と、水浸液の温度が高くなることにより低下する。4.まとめ
75℃と98℃の水浸劣化過程において、HTVのほうが早く劣化が進むが、劣化の程度はEPDMのほうが大きい。また、水浸温度が高いほど吸水とLMWの溶出が早い。撥水性は吸水とLMWの溶出により低下する。乾燥回復過程において試料重量と撥水性の回復の早さは、試料の種類や劣化時の水浸温度にあまり依存しない。40℃のヘキサン浸過程において、LMWの溶出量はEPDMのほうが多い。図中の凡例 ヘ:ヘキサン浸,水:水浸,乾:乾燥,