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3.3 カオスアトラクタとフラクタル

鳥の形をしたアトラクタについて説明する。[6]  以下に示す式 (3.2) のような二つの差分方程式により、 図 3.3 のような図形が得られる。 初期点は tex2html_wrap_inline1680 とする。

  equation135

この式の特徴は、 羽根状図形の近くに、初期値をどのように選んでも、 最終的にはこの図形に収束し、 得られる図形は同じものになる。

   figure146
図 3.3: 鳥の羽根の形をしたアトラクタ

このように最初に出発する点に依存せず、 点列が同じ集合に吸い込まれて動く場合に できる集合のことを、アトラクタと呼んでいる。 この図 3.3 のアトラクタは まだその性質が良く分かっていないことと、 形が奇妙なことからストレンジ・アトラクタとも呼ばれている。 このように単純な二つの式から複雑な図形を描くことができる。 つまり、カオスを用いることにより単純な式で複雑な事柄を表すことができる。

次にフラクタルについて説明する。フラクタルの特徴として

「大域構造が局所構造そのものである」

という構造で、自己相似をもっているため大域と局所を区別する尺度を持ち合わせないことである。これは自然界の岩石の表面、海岸線、樹木の形などに見られる。 フラクタルを以下に示す式 (3.3) のような三つの差分方程式で表してみる。まず適当に初期値 tex2html_wrap_inline1668 をとって、六面体サイコロを振り、出た目の数が 1,2,3 なら tex2html_wrap_inline1684 で、4なら tex2html_wrap_inline1686 で、5なら tex2html_wrap_inline1688 、6なら tex2html_wrap_inline1690tex2html_wrap_inline1668 を写像して tex2html_wrap_inline1694 を定める。それを5万回繰り返すと 図 3.4 のような図形が得られる。 初期点は tex2html_wrap_inline1680 とする。

  equation158

仮に、初期状態を変えても同じフラクタル集合が得られるので図3.4は羊歯の葉のアトラクタであると考えられる。そのためストレンジアトラクタ=フラクタルであると考えられている。[1]

   figure166
図 3.4: 羊歯の葉



Deguchi Toshinori
1998年03月18日 (水) 13時22分42秒 JST