next up previous contents
Next: 参考文献 Up: 無題 Previous: 結合荷重交換実験のまとめ

結論

本研究では,逐次学習法によって学習したカオスニューラルネットワークにおいて, 動的想起を行った. 逐次学習法は学習できるパターン数が多いが, 動的想起をすると想起できるパターン数が少ない. そこで,ネットワークを非同期化することによって, 動的想起の状態を改善できないか調査した.

まず,同期と非同期のネットワークにそれぞれ逐次学習法を適用し, 学習後に動的想起を行った. 非同期化するにあたって, 動作する素子の決定法を3つ用意した. 1つ目は,素子につけられた番号順に更新していく順序固定, 2つ目は,乱数で決定するがすべての素子が動くまで同じ素子を動かさないという制約を設けた 制約あり, 3つ目は,制約を設けず自由に乱数で動作素子を決定する制約なしである.

同期と非同期3種のネットワークそれぞれについて, 学習したパターンに対しての動的想起で想起できたパターンの数を調べた. 順序固定の非同期は,同期と同じ程度の3-5パターン程度しか想起できなかったが, 乱数を使って動作素子を決定する2種類の方法では10パターン以上のパターンを 想起することができた. 想起率については,制約なしの非同期が一番低い値を示していた. これは,他の方法は全て想起ステップ数にある一定の幅をとった時, 全ての素子が動作する保証があるが, 制約なしの乱数の決定に制約がないため, パターンの遷移に必要な素子が動けないためであると考えられる. 想起頻度の偏りについては制約ありと制約なしでどちらが良いかというのは, 判断し辛い結果であった.また,同期と順序固定はパターンを多く想起できないため, 良い値は得られなかった. 想起率と想起頻度の偏りをみると制約あり非同期が,一番良い動的想起状態と言える. この実験により乱数を用いた非同期を使うことによって動的想起の改善ができることが分かる.

つぎに,ネットワークを非同期にすることによって, 逐次学習の学習結果が変化することを考慮して, 同期で学習した後に非同期で動的想起させるものと, 非同期で学習した後に同期で動的想起するものとの動的想起状態を比べた. その結果,同期で学習し非同期で動的想起させたものが, 良い動的想起状態であることがわかった. また,非同期で学習し同期で想起したものの動的想起状態は, 学習から想起まで同期で行った動的想起状態と似ていて, 同期で学習し非同期で動的想起したものは, 全てを非同期で行った動的想起した物と状態が似ている. つまり,学習を同期・非同期のどちらで行っても, 大きな差はないと言える. このことより,非同期のネットワークで動的想起状態が良くなる理由は, 学習によって得られるものではなく,非同期で動的想起されるためということがわかった.

以上の2つの実験によって, 逐次学習によって学習したネットワークの, 動的想起における想起パターン数の少なさは, 乱数を用いた非同期にネットワークの動作方法を変更することで改善できることが示された. また,これが動的想起の時に非同期で動かすことによって, 想起できるパターン数が増えたことと, 乱数で変化する非同期でないと想起されるパターン数が多くならないことから, 別のパターンへ状態遷移する力が, 非同期更新の乱数によってより強くなり, 多くのパターンが想起できるようになったものと考えられる.

今後の課題として,非同期の動的想起の制御方法の提案や さらに多くのパターンを動的想起で想起できるような手法の考案 などが挙げられる.

 

 

謝辞

最後に本研究を進めるに当たり、本科から3年間を通して多大な御指導を賜わりました 出口利憲先生に深く感謝するとともに、 同研究室において共にに学んだ方々に厚く御礼を申し上げます。



Deguchi Lab.