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2.1 ニューロン

1943年、マッカロとピッツは神経細胞のモデルを提案した。これが神経回路を機能面からとらえた最初の研究である。まず、神経細胞としてのニューロンについて述べる。生体の脳神経系は、外界からの情報を感覚器(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を介して入力し、脳で情報処理を行ない、さらに効果器を介して外界へ出力する高度な大規模システムである。脳神経系は機能的および構造的に大変複雑ではあるが、基本的にはニューロン(Neuron:神経細胞)が基本構成素子となって、これらが多数(例えば人間の脳の場合100億から1000億個程度といわれている)集まって三次元に密に結合した回路網を形成している。[4]

   figure13
図 2.1: ニューロンの構造

ニューロンは生体の中で情報処理用に特別な分化を遂げた細胞である。図2.1に示すように、核が存在する細胞体、そこから枝別れしている樹状突起(ニューロンの入力部)と呼ばれる部分、細胞から一本だけ伸びて、その末端で枝別れする、能動ケーブルの役割を果たす軸索(信号伝送路)と呼ばれる部分、の三つの部分に分けられる。樹状突起には、他のニューロンから伸びている軸索が結合しており、そこから信号を受けとる。この結合をシナプス(ニューロンの出力部)と呼ぶ。

通常、ニューロン内部の生体電位は外部に比べて低い。しかし、シナプスを介して他のニューロンからの入力信号が与えられ、加重されたシナプス電位がある大きさに達するとニューロン内部の電位が突然高くなる。この時ニューロンは発火したといい、パルス電圧が軸索を伝わって他のニューロンに信号として伝えられる。これらはニューロンの示す最も基本的な性質といってよい。ニューロンが発火するメカニズムは、次に述べるものである。

ニューロンは、他のニューロンと複雑に結合している。ニューロンには樹状突起があって、そこに他のニューロンが結合していることは前述したとおりであるが、その樹状突起に他のニューロンからのパルス電圧が与えられると、そこの電位をわずかに変える。その他にもたくさんのニューロンの軸索の末端が樹状突起に結合しているので、その場所ごとで電位の変動が行なわれる。それがニューロン本体に伝わり総和をとられる。[5]その総和がある閾値をこえればそのニューロンは発火し、閾値以下ならばニューロンは発火しないのである。

先ほど、樹状突起にパルス電圧が与えられるとそこの電位をわずかに変えると述べたが、その変わり方はそこに与えられている重みによって変化する。重みには正と負があり、ニューロンにも正の値で発火するものと負の値で発火するものがある。正の値で発火するニューロンを興奮型ニューロンといい、他のニューロンを発火しやすくする。負の値で発火するニューロンを抑制型ニューロンといい、他のニューロンの発火を抑制する働きを持つ。

ここで、今まで述べたニューロンの働きを簡単にまとめておく。

・ニューロンは、他のニューロンから受けた信号を、重みつきで総和をとる。

・総和が閾値を越えれば発火し、そうでなければ変化しない。

以上のことを基に、ニューロンのモデルを作ることができる。



Deguchi Toshinori
Thu Jul 13 13:13:35 JST 2000