この研究で題材にされている「カオスニューラルネット」は、 「ニューラルネット」の一種であり、 それは、たくさんの「ニューロン」からなるネットワークである。 「ニューロン」とは脳内の神経細胞や、そのモデルのことをさすが、 この研究では、「ニューロン」は、神経細胞のモデルを指すことにする。
ニューロンはたくさんの入力を受けとり一つの出力をする素子である。 一般に入力に対し出力をするものは、増幅器やコンピュータなどたくさんあるが、 これらは、その機能を果たすために、 いろいろな機能の素子が複雑につながってできている。 これに対し、ニューラルネットは、単純な機能の素子(ニューロン)が 単純につながってできてる。 この単純なものが、脳のように柔軟で複雑な情報処理をすることができるのである。
ニューラルネットは、脳内の神経細胞をモデルにしているので、 文字認識、画像認識、などのコンピュータには難しいとされる、 人間のような、柔軟な情報処理ができる。 しかし、ニューラルネットは単純なモデルなので、人間ほど高度なことはできない。 なにより、現在のコンピュータでは、 シミュレーションできるニューロンの数には、限りがある。 しかし、人間の脳には何百億もの神経細胞がある。 そこで、ニューロンをより本物の神経細胞に近付けることで ニューラルネットの性能を向上しようという試みが行なわれた。 そこで考案されたものの一つがカオスニューロンである。
カオスニューロンは同じ入力を受けても、違う出力をすることがある。 このように出力は無秩序(カオス)である。 実際の脳の神経細胞の出力も無秩序である。 出力がカオスになる理由の一つとして、 過去の入力が出力に影響していることがあげられる。
このことを利用し、この研究では、 カオスニューラルネットに音楽の一部を入力して、その続きもしくは、 新しい音楽を出力することを目的としている。
そのために、必要な基礎知識を得ることからはじめたので、 まずそのことについて説明する。