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結果

  以下では、「学習数」はネットワークに学習させたパターンの数を、「学習成功数」はネットワークが学習に成功したパターンの数を、「想起成功数」は想起に成功したパターンの数(同一のものは含まない)を、意味する。また、Nはネットワークを構成しているカオスニューロンの個数(素子数)を表す。

素子数が100、200、300、400のときの学習成功数と想起成功数を、それぞれ図 5.2、図 5.3、図 5.4、図 5.5に示す。

   figure323
図 5.2: N = 100での学習成功数と想起成功数

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図 5.3: N = 200での学習成功数と想起成功数

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図 5.4: N = 300での学習成功数と想起成功数

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図 5.5: N = 400での学習成功数と想起成功数

素子数が100、200、300、400のどの場合についても以下のようなことが共通にいえる。(1)学習数が小さいとき、想起成功数は学習成功数に一致する、つまり、ネットワークが学習したパターンの全てを想起する、という場合が多い。しかし、(2)学習数がある程度大きくなると、学習成功数と想起成功数の一致は見られず、想起成功数は学習成功数に比して小さくなり、(3)ついには想起成功数は1程度となる。

(2)と同様のことが学習成功数についてもいえ、学習数がある程度多くなると学習成功数は減る。しかし、学習成功数が減少し始めるよりはるかに少ない学習数で想起成功数は減少し始める。想起成功数や学習成功数が減少するのは、学習させたパターンの相似などの影響によると考えられる。学習成功数より少ない学習数で想起成功数が減少するのは、学習成功数よりも想起成功数の方がその影響を強く受けるためだと考えられる。(具体的に何による、どのような影響かは、ここでは詳細な論攷を行なわない。)

図 5.2、図 5.3、図 5.4、図 5.5のみによって、感覚的にはともかく、客観的に、ネットワークの素子数が多ければ想起成功数もまた多いと判断することは難しい。そこで、最大の想起成功数(最大想起数)、学習成功数と一致する最大の想起成功数(最大完全想起数)、学習数が1から100までの間の各想起成功数の総和(図中で想起成功数のグラフと横軸に囲まれる面積に相当)を、判断の指標に用いる。これらを図 5.6に示す。

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図 5.6: 最大想起数、最大完全想起数、想起成功数の総和と素子数との関係

図 5.6に明らかなように、ネットワークの素子数が200のとき、素子数が100のときと比較して、最大想起数、最大完全想起数はともに小さい。同様に、素子数が400のとき、素子数300に比して最大想起数、最大完全想起数は小さい。しかし、素子数100での想起成功数の総和は、素子数200のそれに比して大きい一方、素子数400の想起成功数の総和は、素子数300の場合に比べて小さい。

これは、素子数200の場合は、素子数100の場合よりも、(1)の状態が少なく、(2)の状態を長く取り、従って(3)の状態が少ないことを意味する。3つの指標(最大想起数、最大完全数、想起成功数の総和)によっても、素子数100の場合と、素子数200の場合との、どちらがより良い(多くのパターンを想起し得る)動的想起を実現するかは、断定し得ない。素子数300では、3つの指標どれについても素子数が100、200のどちらの場合よりも大きく、より良い動的想起状態を実現している(多くのパターンを想起し得ている)といえる。しかし、素子数400のとき、素子数が300の場合よりも3つの指標のどれもが小さく((1)、(2)の状態がともに短く)、動的想起状態は悪いといえる。



Deguchi Lab.