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カオスとは

カオス(chaos)とは、「混沌」や「無秩序」という意味を持つ。

現代においてこのカオスという言葉は科学の世界でも使われるようになってきており、 複雑系科学を語る上では必須なものとなっている。 カオスについての研究は19世紀末から20世紀初頭にかけての ポアンカレ(Poincare)の研究に始まる。 また一般的に知られてくるのは1970年代中ごろで本格的な研究が始まって まだ30年あまりしか経っておらずカオス理論は未だ発展途上の分野であるといえる[4]。 そのためカオスというものについて具体的に定義することは難しい。 いろいろな研究者による定義を集約すると「決定論的非周期振動現象」となる。 決定論とは破ることのできない不変の法則に従う系という意味であり、 非周期振動とは偶然によって左右される、確率論的な運動であるという意味である。 つまり、ある式で表されるにも関わらずその解は予想ができない非周期的な振舞いということである。 カオス現象は日常生活では羽の落下運動、煙の動きなどごく当たり前に見ることができる。

具体的なカオス現象の例として次のような系を考える。

  equation94

   figure98
図 3.1: カオス的挙動を与える入出力特性

nは繰り返し回数で離散的な値をとり、また tex2html_wrap_inline1215tex2html_wrap_inline1217 はそれぞれn回目の入力、出力である。 この系の入力と出力の関係は図 3.1 のようになる。

また式(3.1) の初期値 tex2html_wrap_inline1221 を0.70000、0.70001としnを0から50とした時の出力の変化を見てみると、図 3.2 の(a)、(b)のようになる。

   figure109
図 3.2: 初期値のわずかな違いで起こる系の挙動変化の様子

各点がn回目の出力を表し、点線で各点間を補間した。

n=10くらいまではほぼ同じような振舞いを見せるが、回数が増えるに従って全く違う振舞いを見せる。 初期値は1万分の1の違いではあるが 系の振舞いに大きな影響を与えている。以上のことからカオス現象とは式のように、不変のもので表されるが、わずかな誤差で、その後に大きな影響を与えるものだといえる。



Toshinori DEGUCHI
2005年 2月17日 木曜日 19時40分14秒 JST