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第7章 まとめ

この研究では、 2種類のニューラルネットワークに時系列を学習させることと、 カオスニューラルネットワークに時系列を想起させることを試みた。 想起方法は、始めに従来のニューラルネットワークに教師信号を学習させ、 この学習により得られた結合荷重を カオスニューラルネットワークの結合荷重として入力し、 曲を想起させることにした。

まずは、従来のニューラルネットワークの入力層に、 音符と共に0または1の値をそれぞれの素子にランダムに割り当てたものを入力し、 学習を試みた。 出力の誤差は充分小さくなり、学習できたといえる。 その学習後の結合荷重を使い想起を行なうと、 教師信号である「チューリップの花」を完全に想起することができた。

ランダムに割り当てた2値のデータによってフレーズの識別をさせるため、 逆にこれを変化させて入力した場合の変化を調べた。 変化させた値を入力して想起を行なうと、曲の始まりがずれて想起された。 この結果では始まりがずれるだけで、 値は変わらないのでシフトすることで教師信号を再現することはできた。

内部記憶を持つニューラルネットワークでは、 その曲のみの教師信号を与えるだけでは充分に学習することができず、 2値のデータを教師信号として同時に与えるネットワークにすることで 誤差が充分小さくなり、学習を行なうことができた。 このネットワークの学習後の結合荷重を使い想起を行なうと、 教師信号を完全に想起することができた。

通常のネットワークと同様に内部状態を初期状態の際に変化させ、 想起結果がどのように変化するかを調べた。 想起を行なうと出力した曲は音符の値がずれたものになり、 教師信号を再現することは出来なかった。

次に、 カオスニューロンの特徴を決める定数である tex2html_wrap1676 を入力して、 カオスニューラルネットワークでの想起を試みた。 想起結果では、各定数が小さいほど原曲に近い曲が想起された。 逆に定数を大きくしていくとあるところで曲の始点がずれて想起されることになる。 また想起回数によって想起される曲に変化はない。

また想起実験から得られた結果を視覚的に評価するために FFTと相関関数を使って教師信号と比較した。

FFTの結果は低周波領域のスペクトルが特に変化しており、 新しい曲を想起したといえる。 定数を大きくしていくと全域にわたり 周波数成分が変化するようになる。 つまり定数が大きくなるほど原曲より変化した曲を想起されたといえる。

相関関数を求めてみると、 耳で聞いたり、データとして大きく違った曲も グラフの形状が大きく似通っており、 別の曲の相関関数とは違っていたことからも、 完全に新しい曲ではなく教師信号を元にして編曲を行なったといえる。

入力が少しの違いが起こっても教師信号を完全に再現できたり、 想起回数を増加させても曲の変化がないといった結果から、 本研究で用いたランダムに与えた値を持つ入力層は ネットワークに与える影響が大きいということがわかった。 しかし逆に影響が大きいために、 教師信号によるネットワークの変化は少なくなり、 内部記憶を持つネットワークで充分な学習ができないという問題もでてくる。

今後の課題として

などがあげられる。

謝辞

最後に、一年間本研究を進めるにあたって終始多大なご指導をいただきました 出口利憲先生に深く感謝いたします。

また、同研究室において UNIXのことやプログラムのことで助けていただいた専攻科2年生の畑中誠氏、 共に学びあった本科の高木潤君、長江吉彦君に熱く御礼申し上げます。



Deguchi Toshinori
Wed Feb 21 11:55:53 JST 2001