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6.6.2 カオスニューラルネットワークの想起結果の相関関数

FTTでは想起された曲が原曲とは違う新しい曲であると判断された カオスニューラルネットワークの結果で、 何か原曲と関係がないか調べるために、 想起された曲の自己相関関数をそれぞれ求めてみる。 その結果は図6.18 や図6.19 のようになる。

ここで相互相関関数を求めていないのは、 カオスニューラルネットワークによって想起された時系列は周期が違うことがあり、 2つの関数の周期が同じでないと形状を比べる際に意味を持たないからである。 この結果の縦軸は自己相関関数の結果の値を示し、 横軸の示すあるずらした間隔tの場合において、 この相関関数の値が大きいほど、 比較した2つの時系列が酷似していることを表す。 また、相関関数の結果の値は2つの時系列の相関の度合であるから、 物理量は持たないためグラフの縦軸には単位を指定していない。

図より自己相関関数の形状は大きく似通っている。 つまり、全く違うように見える曲も、 曲としての特徴は残したまま 想起されているといえる。 また、図6.18(b) の結果では まだ原曲に近い形状をしているが、(a)などの結果と比べると変化している。 つまり原曲の特徴は残したままであるが、 定数が大きいほど違う曲を想起するといえる。 これらの結果より、 カオスニューラルネットは教師信号とは全く違う曲を出力するのではなく、 教師信号を元にアレンジしていることがわかる。 前述したようにカオス定数によって周期がずれることがあり、それを整えてやれば どこかは似た特徴を持つことがあることも、相関関数が似ている理由であると考察できる。

これらの結果では同じ曲を元にしているため、 同じような形状になっているとみなしていたが、 他の曲の自己相関関数の形状も同じものになってしまうかどうかを調べるため、 他の曲の自己相関関数を求めてみる。 図6.19(c) は「カエルの歌」の自己相関関数であり、 この図から2つの曲の特徴は違っていることがわかる。 つまり自己相関関数ではどの曲からも同じような結果にはならないため、 同じような曲であるか、違う曲であるかを判別することができる。 このことからもカオスニューラルネットは教師信号の特徴を持ったまま想起を行っていることがいえる。

   figure526
図 6.18: 相関関数の結果1

   figure538
図 6.19: 相関関数の結果2



Deguchi Toshinori
Wed Feb 21 11:55:53 JST 2001