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カオス

  カオスを日本語に訳すと「混沌」や「無秩序」といった意味になる。 カオスは19世紀末から研究されてきたが、一般的に広く知られるようになったのは1970年代半ば頃からである。 現時点において、カオスを明確に定義すること自体すらも大変難しい問題とされる程にカオス理論の研究は未開拓である。

カオス現象は、自然物、人工物を問わず非線形システムにごく当たり前に生じるものである。 カオス現象の例を挙げると、炎の揺らめきや海岸に打ち寄せる波、風によって靡く旗などがあり、日常生活の中にも様々なカオスを観察することができる。

また、カオスは生体の活動に対しても重要な役割を占めている。 例えば心臓の鼓動などがそれにあたる。 心臓の鼓動は常に一定ではなく、強弱や緩急が存在する。 刻々と変動して行く予測困難なこの働きは、自然環境の変化に対し、一定の鼓動であるよりも柔軟に対応できるようになっている。 脳に関する範囲で言えば、ニューロン又はニューロンの集団が該当する。 これらは単一の機能を持つように構築されるのでは無く、それらを取り巻く脳内環境や外界の状況に応じて複数の機能を果たせるように構築されている。 更にそれらの活動状態は時間的に複雑な振る舞いを示し、それらはつまりカオス的遍歴と関係している、という津田の見解などがある。 [4]

現在では、力学系においてカオスとは一般的に、「決定論的非周期振動現象」という定義が為されている。 即ちこれは、不変の法則から成立する系でありながらも、その解は法則性を持たない非周期的な振る舞いを示す、予測不能な現象のことである。 [5]

具体的なカオスの例として、式(3.1)のような系を考える。

  equation116

   figure119
図 3.1: カオス的挙動を与える入出力特性

式(3.1)の入力 tex2html_wrap_inline1286 と出力 tex2html_wrap_inline1288 の特性を表したものが図3.1であり、これはロジステック写像と呼ばれる一次元カオスである。 図3.2、図3.3はこの系の入力と出力の関係であり、図3.2においては tex2html_wrap_inline1238 、図3.3においては tex2html_wrap_inline1240 と初期値を定めている。

   figure133
図 3.2: tex2html_wrap_inline1238 の時の挙動

   figure140
図 3.3: tex2html_wrap_inline1240 の時の挙動

これらの図より、初期値の差が僅かであっても系の振る舞いには大きな影響を及ぼすことが判る。



Toshinori DEGUCHI
2005年 4月 1日 金曜日 17時24分52秒 JST