本研究におけるニューラルネットワークの学習は、 バックプロパゲーション法(back-propagation、誤差逆伝搬法)を用いた。 まずバックプロパゲーションについて説明する前に、一般化デルタルールについて説明する。 ある素子 j の入力総和 は、 他の素子 i の出力 と、重み をかけて加えたものである。 また、出力 は入力の総和を単調増加関数 f に代入したもので表されることにする。即ち、
と表せる。ただし、閾値は重みの一つとして含まれていると考える。 ここで、出力関数 f はシグモイド関数を用いることにする。 これは微分可能な関数であり、解析的に問題を解くことが可能になるからである。
次に、神経回路における学習を一般化して考える。 はある入力 c に対して出力素子 j が出すべき望ましい出力、 はその時の出力素子が実際にした出力である。 この時の学習評価として、次のような「誤差関数 E」
を考える。このような形の誤差関数を最小にする手続きを一般に 「最小2乗平均誤差法」(least mean square、LMS)という。 はその時の素子間の結合の強さ、 すなわち重み で決まるため、 誤差関数も重みに関して陰(implicit)に定義された関数となる。 したがって、各重みの値を軸としてできる空間を考え、さらにこの誤差関数 E によって定義される値を高さと考えれば、 E は重み空間上の超曲面として「誤差曲面」を与えることになる。 任意の重み状態から、この誤差曲面の極小値に達するには、 例えば各重みを、 に比例した量
ずつ変化させていけばよいことになる。 ここで は学習定数である。 これは誤差曲面上を最も急な傾斜方向に進んでいくことに相当し、 このような学習則を一般に「最急降下法」(gradient decent method)という。
さて、式(3.1)のように素子の性質が定義されていれば、 式(3.3)は合成関数の微分公式により、
と展開できる(添字 c は省略)。 式(3.1)を微分して代入すれば、
であるので、結局式(3.3)は、
となる。中間層が学習しない場合、 の項は 式(3.2)を微分することにより簡単に
と求めることができるので、式(3.7)より、
という学習則が得られる。 これを一般化デルタルールと呼ぶ。