next up previous contents
Next: 第5章 周期信号の検出 Up: 第4章 同期ニューラルネットワークにおける学習 Previous: 4.1 学習

4.2 学習原理

同期ニューラルネットワークにおける学習の原理を、次の様にする。

これについて詳しく説明するために、図4.1の様な二つのニューロンから 接続されているニューロンを例に挙げる。

   figure88
図 4.1: 2入力のニューロン

このニューロンには図4.2の入力が過去に入ったものとする。 ここでニューロン tex2html_wrap_inline1908 からとニューロン tex2html_wrap_inline1910 からの信号の周期を等しく考えるのは、 外部からの入力はどのニューロンにも等しく入力されていてるので、 同期ニューラルネットワークを巡る信号は全てこの外部入力に起因し、 それらの信号の違いは位相だけであると考えられるからである。

この図より、パルスを出力させるためにはニューロン tex2html_wrap_inline1908 の出力を右に、 ニューロン tex2html_wrap_inline1910 の出力を左にシフトして、ニューロン tex2html_wrap_inline1908 からと ニューロン tex2html_wrap_inline1910 からのパルスのタイミングを合わせれば良いことがわかる。 ここで出力を右にシフトすることは、信号の到達時間を大きくして信号が 入ってくるタイミングを遅らせることを意味し、出力を左にシフトする ことは、信号の到達時間を小さくして信号が入ってくるタイミングを早めることを 意味する。

   figure97
図 4.2: ニューロンCの入力

しかし、前節でニューロンは時間的にも空間的にも限られた情報しか 参照することは出来ないと述べた。この方法では、ニューロンは空間的には 局所的だが、時間的には遠い過去までの信号を参照していることになる。 そこで、ニューロン内部に新たなパラメータを考え、それによって 同様の結果が導ける様にする。

この新たなパラメータは、接続されているニューロン一つにつき一つ用意され、 そのニューロンからの入力の総和を記憶する。入力の総和は過去のものほど重みが 小さくなる様にする。これを式で表すと

  equation105

となる。ここでm(t)が入力の総和、s(t)がニューロンからの入力、kは係数で 1未満である。kが1未満であるので過去の入力はkの累乗に比例して 小さくなる。これは過去から現在までの入力に、指数関数的な重みをかけたものの 和に等しい。 これより、ニューロンが入力の総和m(t)の値しか知らない場合についての学習方法を 考えてみる。

今、ニューロン tex2html_wrap_inline1908 からの入力の総和 tex2html_wrap_inline1940 とニューロン tex2html_wrap_inline1910 からの 信号の総和 tex2html_wrap_inline1944 を比べた時、 tex2html_wrap_inline1944 の方が大きかったとする。 遠い過去に入力された信号の影響は小さく無視出来ると考えられるので、 過去の入力は図4.3の様にニューロン tex2html_wrap_inline1910 からの方が 遅く入力されたと予想される。 しかしこれだけの情報では実際の入力が、図4.4の 様にニューロン tex2html_wrap_inline1910 からのパルスが、ニューロン tex2html_wrap_inline1908 からのパルスのすぐ後に 入力されたのか、また図4.5様にューロン tex2html_wrap_inline1910 からのパルスが 入力されてから時間が経った後に入力されたのかはわからない。 パルスが出力されるためには、 図4.4の様ならばニューロン tex2html_wrap_inline1908 からの出力を右に、 ニューロン tex2html_wrap_inline1910 からの出力を左にシフトした方が良いが、図4.5の 様ならばニューロン tex2html_wrap_inline1908 からの出力を左に、ニューロン tex2html_wrap_inline1910 からの出力を右に シフトした方が良いため、 図4.44.5どちらであるかという情報は必要である。

   figure115
図 4.3: 入力の総和から判断出来る過去の入力

   figure123
図 4.4: 予想される過去の入力1

   figure132
図 4.5: 予想される過去の入力2

4.44.5のどちらであっても 適した方へシフトさせるために、 入力の総和と信号の到達時間の関係を次の様に定める。

これらの原則によってパルスが出力される様になるまでを、図4.64.12によって説明する。

t=0
tex2html_wrap_inline1978 なので tex2html_wrap_inline1980 は増加、 tex2html_wrap_inline1982 は減少する(図4.6)。
t=1
t=0と同様で tex2html_wrap_inline1980 は増加、 tex2html_wrap_inline1982 は減少する(図4.7)。
t=2
ニューロン tex2html_wrap_inline1908 からパルスが入力されるので、 tex2html_wrap_inline1996 となり、 tex2html_wrap_inline1980 は減少、 tex2html_wrap_inline1982 は増加する(図4.8)。
t=3
t=2と同様で tex2html_wrap_inline1980 は減少、 tex2html_wrap_inline1982 は増加する(図4.9)。
t=4
t=4で今度はニューロン tex2html_wrap_inline1910 からパルスが入力されるので、 tex2html_wrap_inline1978 となり、 tex2html_wrap_inline1980 は増加、 tex2html_wrap_inline1982 は減少する(図4.10)。
t=5
t=4と同様で tex2html_wrap_inline1980 は増加、 tex2html_wrap_inline1982 は減少する(図4.11)。
t=6
t=5と同様で tex2html_wrap_inline1980 は増加、 tex2html_wrap_inline1982 は減少する(図4.12)。

これで一周期であるが、全体で見ると、 tex2html_wrap_inline1980 は増加、 tex2html_wrap_inline1982 は 減少している。つまり、よりパルスが出力される様に、発火する様に 変化したと言える。

   figure154
図 4.6: t=0

   figure162
図 4.7: t=1

   figure169
図 4.8: t=2

   figure176
図 4.9: t=3

   figure183
図 4.10: t=4

   figure190
図 4.11: t=5

   figure197
図 4.12: t=6



Deguchi Toshinori
1999年03月16日 (火) 16時39分45秒 JST