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カオス

カオスを日本語に訳すと混沌、混乱、無秩序といった意味となる。 19世紀末から20世紀にかけてポアンカレの研究以来、カオスの概念が表舞台に登場してきた。[2] カオスの定義は研究者によって異なり、統一的な見解は得られておらず、この定義する事自体が一つの大きな問題であるということができる。 本研究ではカオスを「決定論的力学系において生じる非周期的振動」とする。[6]

決定論的な立場では、系の状態が次にどのように変化するのか確定している。 つまり初期値が一つに定まれば未来の状態を予測する事ができる、ということを前提としている。 このとき、システムが線形であれば、解は非常に単純な振舞しか示さない。 しかし非線形であれば、解の挙動は非常に複雑かつ多様となる。 つまりカオス状態においては、系の未来の状態を全く予想する事ができなくなる。

カオスの特徴として、初期値の非常に小さな差が、将来の結果に多大な影響を生み出す事があげられる。 このようなカオス現象は、人工物、自然物を問わず非線形システムでは普通にみられるものである。

具体的なカオスの例として式(3.1)のような系を考える。


\begin{displaymath}
x_{n+1}=4x_n(1-x_n)
\end{displaymath} (3.1)

図 3.1: カオスを示す関数の入出力特性
\includegraphics[scale=1.0]{shazo.eps}

式(3.1)の入力$x_n$と出力$x_{n+1}$の特性を表したものが 図3.1 であり、 これはロジステック写像と呼ばれる一次元カオスである。 この系に初期値を与えたときの振る舞いを図3.2、図3.3に示す。 図3.2$x_0=7.0000$、図 3.3$x_0=7.0001$ と初期値をきめた。

図 3.2: $x_0=7.0000$の時の挙動
\includegraphics[scale=1.2]{chaos70000.eps}

図 3.3: $x_0=7.0001$の時の挙動
\includegraphics[scale=1.2]{chaos70001.eps}

このように初期値のわずかな違いが、その後の系の振舞いに大きな影響を与えることがわかる。 カオス状態ではわずかな誤差が拡大され、系の振舞いを大きく変えてしまうと言える。



Deguchi Lab. 2011年3月4日