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カオスニューロン

合原らのヤリイカの巨大軸索を用いた実験により、 ニューロン内にもカオス現象が存在することが明らかにされた。[6] 前章で述べたような従来のニューロンモデルでは、 多数の入力の結合荷重としきい値作用をニューロンの特徴的な機能として採用し、 モデル化を行なってきた。これは、 忠実にニューロンをモデル化すると取り扱いを複雑にし、 その本質を理解するのに障害になると考えられていたからである。 さらに出力関数に関しても階段関数で表されている。

しかし合原らの実験によると、 実際のニューロンは空間条件を固定して注意深い実験を行なうと、 その応答は非周期的であり出力関数は急峻な立ち上がりを持つことが分かった。 ニューロンの出力関数は図3.4のように連続的に応答が変わる。 したがって、ニューロンの出力は全か無かの法則が成立していない。 この不成立こそがニューロンにカオスを生じさせる原因である。 つまり、ニューロンのカオスは全か無かの法則の不成立ゆえに成立するのである。

そこで合原らにより、 Caianiello-Sato-Nagumoモデルに「カオス」の要素を取り入れたカオスニューロンが考案された。 このモデルは式(3.2)で表される。 [7]


\begin{displaymath}
x(t+1) = f[A(t)-\alpha\sum_{d=0}^{t}k^d g\{x(t-d)\}-\theta]
\end{displaymath} (3.2)

ここで$x(t+1)$は時刻$t+1$におけるニューロンの出力、 $A(t)$は時刻$t$における外部入力の大きさ、 $\alpha $は不応性の項に対するスケーリングファクタ$(\alpha\ge0)$$k$は不応性の定数$(0\le k<1)$$g$は不応性によるフィードバックの大きさを求める関数である。 不応性とはニューロンが興奮した後、 一時的にしきい値が上昇する性質のことである。 また、膜電位や不応性は減衰されながらもしばらくの間残る。

出力関数$f$は図3.4のようなシグモイド関数を用いる。 この関数は式(3.3)で表される。 この式において、$y$が入力値、$\epsilon$は急峻さを決めるパラメータである。


\begin{displaymath}
f(y)=\frac{1}{1+\exp({\frac{-u}{\epsilon}})}
\end{displaymath} (3.3)

図 3.4: シグモイド関数
\includegraphics[scale=2.2]{sigmoid2.eps}



Deguchi Lab. 2011年3月4日