実験内容

ここで、収束までにかかった時間に注目してみる。収束までにかかった時間が短いほど、記憶検 索としては評価が高い。実験2から実験4での収束までにかかった時間の平均を、Table 6.6 に示す。Table 6.6では、記憶検索の成功か否かに関わらず、収束までかかった時間のみ で計算している


表 6.6: Average Time to Converge 1
 
Experiment 2
Experiment 3
Experiment 4

Table 6.6よりいずれの抑制関数のモデルでも、パターン数が20から30に増加したら、収 束までにかかる平均時間が増加することがわかる。これも記憶検索の成功率と同様に、記憶する パターン数が増加したため、一つを思い出すまでに時間がかかることが直接的な原因となってい ると思われる。Table 6.6より実験4では、$cos$を用いた場合を除き、実験3よりも収束ま でにかかる平均の時間が多くなっている。原因としては、記憶させたパターンに対してのみ敏感 な特徴抽出機構を追加したため、一致したと判定する基準がより厳しくなったことがあげられる。

実験5では、収束までにかかる平均の時間を減らすことを目的とする。案として、抑制値を更新 するタイミングを動的想起のタイミングとずらすこととする。実験4まで、動的想起状態にある カオスニューラルネットワークが出力を更新するタイミングで抑制値を更新していた。そこで、 実験5では抑制値を更新するタイミングを減らし、カオスニューラルネットワークの出力が複数回更 新されたら抑制値を1回更新することとする。

抑制値の更新に間隔を設けた理由としては、例えば理想的な抑制値が与えられた時、ネットワークは 目的とするパターンを想起するよう動作する。しかし、これまで用いてきたモデルだと、想起に至る 前に抑制値が更新されてしまい、目的とするパターンが想起されるのを妨げられることが懸念される。 これを防ぐために、抑制値の更新に間隔を設けたのである。

実験5では実験4と同じパターンを使用し、ネットワークが5回更新されたら抑制値を更新するよ うにする。実験4と同様、特徴抽出機構は二つ用いた。



Deguchi Lab. 2017年3月6日