2.2節で述べたMPモデルには実際の神経細胞の特性と異なる部分があるとして、 合原らが提案したのがカオスニューロンモデルである[6][7]。 異なる部分として挙げられた1つが不応性の有無である。 これは発火した神経細胞は閾値が一時的に通常よりも大きくなり再発火しにくくなる性質である。 但し、時間とともに閾値は元に戻るため不応性は時間とともに指数関数的に減衰する。 そしてもう1つが出力特性である。 MPモデルではヘビサイド関数が用いられていたため、1または0しか値は取り得なかった。 しかし実際の神経細胞は急峻ではあるが連続的に応答の大きさが変化する特性を有する。 そこで、出力関数を式(2.2), 図2.5のようなシグモイド関数で表される連続出力関数で置き換える。 通常このシグモイド関数には0から1まで範囲で変化をするものが利用されるが、 本研究では解析を簡便に行うためにから1まで変化するものを利用する。
このように提案されたニューロンモデルをカオスニューロンモデルと呼ぶ。 1入力を受けている1つのカオスニューロンモデルは次式で表される。
ここで は時刻での内部状態、 は時刻における出力、 は不応性の時間減衰定数、 は不応性の項に対する係数、 は入力のシナプス結合荷重、 はニューロンからの入力、 は閾値である。
カオスニューロンを用いた実験、例えば上記を分岐パラメータとした応答特性実験、 における出力は予測不可能な挙動を示すようになる[8]。 この予測不可能な挙動を合原らはカオス性を有する悪魔の階段と呼び、 実際にヤリイカ巨大軸索を用いた電気生理実験でも確認されている[9]。 それ故にこのニューロンモデルをカオスニューロンモデルと呼び、 より実際の神経細胞と近いとされている。